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【質問】 いびきが治らない

 57歳の主婦です。いびきで悩んでいます。25年前に鼻茸(はなたけ)がある、と言われました。アレルギー性鼻炎で、数種類のアレルギー検査をしましたが、原因は分かりません。治療は4年ほど前はしていましたが、現在は何もしていません。薬も飲んでいません。鼻茸を取るといびきをかかなくなるのでしょうか。臭覚はあまりよくありませんが、手術すると全く臭覚がなくなるということはないのでしょうか。ほかにいびきの原因はあるのでしょうか。教えてください。



【答え】 呼吸道の狭さく -鼻茸が原因なら切除で改善-

中村耳鼻咽喉科クリニック 中村 克彦(板野郡北島町高房)

 質問に答える前に鼻の機能と解剖について簡単に説明します。

 鼻の機能は<1>臭覚をつかさどること<2>呼吸の通り道<3>発音器官としての共鳴腔(くう)-の3つに大別できます。このうち最も重要なのが呼吸道としての機能です。吸気は鼻を通過する際、加湿、加温され、さらにほこりや細菌が濾過(ろか)され、のどや気管、肺にやさしい空気に置き換わります。


 鼻の入り口は小さいのですが、鼻の中(鼻腔)は広く、左右より上、中、下鼻甲介という3つの棚が張り出し、複雑な構造になっています。さらに、その奥には副鼻腔という空気の小部屋が多数存在します〈図参照〉。鼻腔、副鼻腔はすべて粘膜で覆われており、広い面積を持った粘膜の働きによって効率よく加湿、加温、浄化が行われています。

 鼻腔や副鼻腔の粘膜に細菌の感染やアレルギーによる炎症が起こると、粘膜が肥厚してきます。副鼻腔の粘膜の炎症が慢性化し、浮腫状に膨らみ、鼻腔内に突出した状態を鼻茸と呼びます。鼻茸は別名「鼻ポリープ」とも呼ばれます。ポリープとはクラゲを意味する言葉であり、その名のごとく半透明で寒天ようの物質が鼻腔内に充満してきます。

 鼻茸が鼻腔に充満してくると、呼吸道が閉塞(へいそく)するとともに最初に述べた鼻の3つの機能が障害されます。すなわち、鼻閉のために口呼吸になり、においが分かりにくく、閉鼻声を生じます。さらに吸気の加湿、加温、浄化機能が失われるため、のどや呼吸器の感染を起こしやすくなります。

 さて「鼻茸を取ると臭覚が悪化するのでは」という内容の質問ですが、鼻茸を取るとにおいの物質が鼻腔の奥にある臭覚の感覚細胞に到達しやすくなるので臭覚が回復する可能性のほうが高いでしょう。

 また「いびきの原因は何か。鼻茸を取るといびきが治るか」という質問についてですが、いびきの原因はさまざまです。呼吸道のどこかに狭さくがあると、その部位を通る空気が粘膜を振動させていびきが生じます。軟口蓋(なんこうがい)(上あごの後方)や舌根(舌の後方)部で振動が生じることが多いとされますが、鼻茸による鼻腔の狭さくでも生じます。実際に鼻茸を切除した多くの方が「鼻の通りが良くなり、いびきも改善した」と話しています。鼻茸を取ることにより、いびきも軽快することが大いに期待できるでしょう。

 質問の患者さんは「鼻の手術は痛い、怖い」と思う気持ちがあり、20年以上も手術せずに我慢してきたのではないかと思います。確かに10年ほど前までは、副鼻腔根本術という手術が行われ、患者さんの負担も大きかったのですが、現在では内視鏡を用いた鼻内手術が広く行われるようになりました。

 さらに鼻茸を切除吸引するためのマイクロデブリッダーという手術器具が開発されています。手術時の痛みや出血は以前と比較できないほど軽減され、安全かつ迅速な手術が可能になっています。ぜひ近くの耳鼻咽喉科を受診し、治療方法について相談することをお勧めします。

徳島新聞2005年3月6日号より転載

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