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【質問】 エコー検診で「はれ」指摘された

 60代前半の男性です。昨年6月ごろ、前立腺に違和感があり、泌尿器科で診てもらうと「若干のはれと石がある」と診断されました。石は小さく問題ないということで、尿道を広げる薬を2週間ほど飲みました。しかし、先日、内科医のエコー検診で再度、前立腺のはれを指摘されました。前立腺のはれは尿道を圧迫し、尿の出が悪くなるということを聞いたことがあるのですが、私の場合は以前から頻尿で、今も夜間に3~4回排尿のために起きます。どうすればいいでしょうか。



【答え】 前立腺肥大症 -飲酒・風邪薬に注意-

阿南共栄病院 泌尿器科部長 山本 修三

 前立腺肥大症になり尿道が圧迫されると、ちょうど水道のホースを足で踏んづけているのと同じ状態になり、尿の出が悪くなります。50歳以上では約20%の人にみられるといわれていますが、症状の変化が非常に緩いため、ほとんどの患者はどの程度、排尿の具合が悪くなっているのか認識できないでいます。込み合った公衆トイレで、隣は2人、3人と入れ替わっていくのに、自分はまだ頑張っている-。こんなとき、初めて異常と認識し、泌尿器科を訪れる人も珍しくありません。

 質問の男性は、夜間頻尿が3~4回あるということで、かなり症状が強いと思われますが、これだけで治療方針を決定することはできません。

 尿の出にくさを言葉で表現するのは困難で、現在はどの施設でも少しでも客観的に評価するために国際前立腺症状スコア(I-PSS)というものを使っています。紙面の都合で掲載できませんが、排尿障害の程度を五段階で評価し、排尿、生活の障害度を点数で表すものです。

 スコアに加え、尿流量検査(尿の勢いの検査)や前立腺の大きさ、尿路合併疾患の有無、排尿に影響のある薬剤服用の有無、健康状態などを検討し、治療方針を決めます。飲酒や風邪薬、睡眠薬などが症状を悪くさせている場合も少なくありません。

 治療法ですが、特別な場合を除いて、まず薬物療法が試みられるのが一般的です。前立腺肥大症の薬には質問の男性が服用した尿道を拡張させる薬(アルファブロッカー)のほかに、植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬、抗男性ホルモン剤などがあります。現在では、即効性のあるアルファブロッカーを最初に使うことが多くなっています。この薬で効果がない場合は、他剤を併用するか、体力的に問題がなければ手術を勧めます。

 手術療法としては、内視鏡による経尿道的手術が一般的です。これは電気的に前立腺の肥大した部分を切除する方法で、10~14日の入院が必要となります。1時間ほどの手術で、手術の翌日から歩くことができます。県内には内視鏡手術に精通した専門医がたくさんいるので、どの施設でも手術はできると思います。健康に問題があって内視鏡手術が困難な人には、より負担が少ない温熱療法や尿道内に尿道ステントという短い管を置く方法などがあります。

 治療法を選ぶにあたっては、患者の意志が最も重要です。例えば、飲酒のために排尿に強度の苦痛を感じているが、酒が大好きだという人は、手術を選んで、うまい酒を飲む方がいいでしょう。一方、症状が強くても全く不便を感じていない人であれば、薬物療法を継続していいと思います。要するに、排尿障害の程度と、それが自分にどれだけ影響を与えているかを把握し、担当医と相談しながら治療を継続することが大切です。

 前立腺結石は尿道内に出てくることはないので、特別な症状がない限り治療は不要です。前立腺の手術を受けるときには一緒に除去できます。

徳島新聞2002年4月28日号より転載

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