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【質問】 ものが二重に見える

 60歳の男性です。2年ほど前からものが二重に見えます。右目で見ているものは右上に、左目は左下にずれて、だぶって映ります。治療法はあるでしょうか。



【答え】 眼筋麻痺 -ビタミン内服や点滴で治療-

阿南共栄病院 眼科 川端 昌子

 ものが二重に見える症状を複視と言います。人間の眼は二つありますが、それぞれの眼球に映った像は、中枢、すなわち脳で一つに重ね合わせ、ものの立体感や遠近感を感じるような仕組みになっています。両眼の視線が一致している状態では、両眼に映った像は重なって一つに見えていますが、何らかの原因で視線が一致しなくなると、ものが二重に見えるようになります。また、眼球には外眼筋という六個の筋肉が付いていて、眼球を自由に運動させることができますが、この運動は、中枢神経にコントロールされており、通常の状態では、両方の眼の動きはバランスがとれて視線は一致し、ものが二重に見えないようになっています。

 この外眼筋の動きが悪くなることを眼筋麻痺(まひ)と言います。本来、その筋肉が作用する方向を見ると、両眼の視線を合わすことができにくくなるため、二重に見えます。たとえば右眼を外側へ動かす筋肉の動きが悪くなると、正面や左を見るときは一つに見えていますが、右を見たとき二重に見えるようになります。このため、複視を避けるために頭を傾けたり、顔を一定方向に向けたりすることもあり、肩こりなどを訴えることがあります。

 複視の原因としては<1>中枢に脳動脈瘤(りゅう)や脳梗塞(こうそく)などの異常がある<2>外眼筋に異常がある<3>外眼筋と中枢を結ぶ末梢(まっしょう)神経に異常がある<4>神経と筋肉の接合部に異常がある(筋無力症)<5>副鼻腔炎や眼球の周囲の骨の骨折や腫瘍(しゅよう)など眼の周囲との関連がある-ことが上げられます。

 検査では、診察で眼球の動きぐあいや対光反応、眼瞼(がんけん)が下がっていないかどうかなどを調べ、異常のある外眼筋を特定するために眼に映る像のずれを調べる検査(複像検査)をします。原因の部位を調べるため、CTやMRIで中枢や外眼筋・眼球周囲の異常がないかどうかを検査します。また、糖尿病で神経の麻痺から複視が起こったり、甲状腺の病気で外眼筋が肥大して眼球が動きにくくなって複視が起こることもあるので、血液検査などをすることもあります。

 治療はそれぞれの原因に対してすることになります。<1>は脳神経外科、<2><3><4>は内科や脳神経外科、<5>は耳鼻咽喉科などと連携を取りながら治療します。原因にもよりますが、一般的には、ビタミンB12や脳循環代謝改善薬の内服、ステロイドの内服や点滴で治療します。また、プリズムを用いた眼鏡をかけることで、症状が軽減することもあります。このような治療でもよくならないときは、数カ月経過をみた後に外眼筋をずらす手術を行う場合があります。

 複視は片眼ずつでは一つに見えても、両眼で見ると二つに見えて、ものの位置がわかりにくくなったり、歩行に支障をきたすこともあり、生活上さまざまな不都合が生じる病気です。場合により、脳動脈瘤など生命にかかわる場合もあるため、原因を知ることが大切です。

徳島新聞2002年4月21日号より転載

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