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【質問】 手・足首のしみは治るか

 63歳の主婦です。老人性色素斑のしみが手首、足首にでき、孫におばあちゃんの手汚いねといわれてショックでした。大きさは0.5~1.5センチで、手首に20、足首に15カ所ほどあります。治療できるのでしょうか。



【答え】 老人性色素斑 -レーザー療法など効果的-

徳島赤十字病院 形成外科副部長 原田 浩史

 老人性色素斑は、皮膚表面からの盛り上がりのない褐色斑で、主に中年以降の人の顔や手の甲、前腕など光に当たりやすい部位によく発生します。大きさは普通直径5ミリから10ミリで、円形や楕(だ)円形をしており、単発の場合も多発する場合もあります。

 皮膚の色が褐色や黒色に変化するときは、メラニンという色素が増えています。これにはメラニンをつくる色素細胞が増えている場合と、メラニンだけが増えている場合があり、老人性色素斑ではメラニンだけが増えている場合が多いようです。これは色素細胞が増殖した腫瘍(しゅよう)ではなく、皮膚の表層にある表皮細胞の老化に伴う変化に過ぎないことを示しています。程度に個人差はありますが、だれにでも起こるものだといえます。

 老人性色素斑は、日光の反復照射、特に紫外線によって生じる場合が多いと考えられるため、予防には遮光が必要です。

 色素の沈着を防ぐには、UVAとUVBの両方をカットする遮光剤(日焼け止めクリーム)が効果的です。外出の際には顔だけでなく手などの露光部にも塗るようにしてください。

 治療には液体窒素による凍結療法、レーザー療法、グリコール酸などを用いたケミカルピーリング、皮膚を薄く削り取る皮膚剥削(はくさく)術などがあり、いずれの方法もある程度の効果は期待できます。しかし、一時的に色調の増強が起こることが多いので、十分な説明を聞いてから治療を受けるようにしてください。長い場合は1年間の観察が必要です。

 ご質問の“老人性色素斑のしみ”ですが、周りの皮膚に比べるとわずかに盛り上がり、表面が少しカサカサした感じになっていませんか? それでしたらおそらく脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)と思います。

 これは別名を老人性疣贅(ゆうぜい)=いぼ=といい、老人性色素斑が隆起、角化して起こることがよくあります。ただし脂漏性角化症の場合には、光が直接当たりにくい部位に多発するタイプもあります。すなわち前胸部や背中、足首などです。

 あなたの皮疹(しん)は手首、足首に多いということなので、四肢の末梢(まっしょう)に左右対称に生じるタイプと思います。

 治療法は先ほどの老人性色素斑と同様ですが、部位によってはメスで切除することもあります。大きさや部位、タイプなどに合わせて最も効果的と考えられる治療を選択してください。といっても液体窒素やレーザーはどこの施設にも置いてあるとは限らないので、皮膚科や形成外科で相談してください。適当な施設を紹介してくれると思います。

 また一見、皮膚の色素斑のように見える皮膚癌(がん)の前駆症状もあるので、的確な診断をつけるためにも一度専門医の診察をお勧めします。

徳島新聞2002年1月6日号より転載

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