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【質問】 睡眠時に呼吸が止まる

 52歳の夫のことで相談します。夜眠っているときに、長い間呼吸が止まるので心配です。私が6~7回呼吸する間止まっていて、ガーッと大息をしたり、とても浅い呼吸を何回かした後、ガーッと大きく吸い込んだりします。こんなときは大きないびきをかいています。以前は、横向きに寝るといびきは止まっていたのですが、最近は止まらず眠りも浅いようです。知人に聞くと、睡眠時無酸素呼吸といって、呼吸が止まっている時間が30秒以上でなければ心配ないと言っていましたが、やはり心配です。受診するのなら何科がよいのでしょうか。夫は身長185cm、体重83kgのスポーツマンです。



【答え】 睡眠時無呼吸症候群-閉塞部の余剰組織切除-

徳島大学医学部 耳鼻咽喉科学教室助手 堀 洋二

 睡眠中に呼吸が止まるとのことですので、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。呼吸が10秒以上止まるのは異常で、この病気は、その回数が7時間の睡眠中に30回以上、または1時間当たり5回以上あり、いびきや昼間の傾眠などの症状を引き起こす状態と定義されています。

 正確な診断をするには、睡眠時の呼吸状態を総合的に調べる呼吸モニター検査が必要です。上気道の閉塞(へいそく)のため呼吸が停止する閉塞型、肺の運動自体が停止する中枢型、両者の混合型に分類されます。原因となる疾患を表で示しましたが全体の約80%は閉塞型です。

 さてご主人の病態をまとめますと、1.肥満傾向である 2.無呼吸から呼吸再開時に大きないびきをかく 3.スポーツマンである-という閉塞型を示唆する3つのキーワードが挙げられます。
 すなわち肥満の方は、上気道に脂肪などが蓄積する結果、気道閉塞のため無呼吸が起こりやすくなり、上気道の圧が高くなります。呼吸再開時にはその圧が一気に解消されるため、顕著ないびきが起こるものと考えられます。また、スポーツマンで健康体だと考えますと、閉塞型の可能性が高いでしょう。

 閉塞型の治療は、閉塞部位(図参照)によって異なります。最も頻度の高い軟口蓋(なんこうがい)型に対しては、外科治療が行われます。一般的には口蓋扁桃(へんとう)を含めて周囲の組織を切除する方法が全身麻酔で行われます。ただし軽症だと、軟口蓋の余剰組織のみを切除します。この場合、レーザーを使うことにより、外来あるいは短期入院で局所麻酔での手術ができるようになりました。

 舌根型に対しては、睡眠中に鼻を介して空気を上気道に送り込み、上気道を常に陽圧に保って閉塞が起こらないようにする持続的陽圧呼吸法が一般的です。軽症の場合は口腔(こうくう)内補装具で下あごを前方に出すことによって上気道を広げる方法もあります。しかし、睡眠時無呼吸症候群は肥満の方に多く、これらの治療を受ける前に減量を試みることが大切です。

睡眠時無呼吸症候群の原因
閉塞型
中枢型
口蓋扁桃肥大、
アデノイド肥大
下あご発育異常
脳障害、心臓障害、
頚・延髄障害
肺疾患
肥満を表す指標としてBMI〈体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値〉が使われますが、この値を25以下にする努力が望まれます。

 閉塞型は、高血圧、心筋梗塞(こうそく)、脳血管障害などの合併や、昼間の傾眠のための高い交通事故率、突然死の報告もあり放置できない病態です。耳鼻咽喉科の診察を受け、睡眠時の呼吸モニター検査をお勧めします。
徳島新聞2001年10月21日号より転載

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