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【質問】 2週間以上1日4、5回の通便

 60代の女性です。このところ2週間以上も下痢が止まらず困っています。主治医に繊維のある野菜を食べるように言われ、実行したのですが治まりません。私には糖尿病もあり、早く食事療法がしたくて焦っています。下痢は1日4~5回で、熱も痛みもなく、肛門も異常ありません。治るのでしょうか。ちなみに昨年、大腸の手術をしています。



【答え】 下痢症 -著しい体重減は要注意-

高岡消化器内科 院長 高岡 猛(徳島市福島2丁目)

 下痢とは、水様または水様に近い便のことで、ふん便中の水分量が、日量150~200ミリリットル以上と定義されています。下痢は持続期間が1~2週間以内の急性と、それ以上続く慢性に分けられます。

 急性下痢をきたす主な疾患は、細菌やウイルスによる感染性腸炎、抗生物質起因性腸炎、虚血性腸炎などで、そのほか暴飲暴食、アレルギーや毒物、薬物、神経性などの作用でも起こります。

 慢性の場合、原因は胃や小腸性の病気、慢性感染症、寄生虫、薬物、放射線治療、膵(すい)臓疾患、肝臓、胆道疾患、代謝内分泌の異常、腸の手術後などの多岐にわたります。なかでも原因疾患として多いのは、神経質な人に多い過敏性腸症候群であり、次いで大腸癌(がん)、潰瘍(かいよう)性大腸炎、クローン病などの慢性炎症性疾患が挙げられます。

 さて、あなたは昨年、大腸の手術をされているとのことですが、どのような疾患だったのでしょうか。術後の経過は順調でしたか。腸の手術後は、下痢を起こすことがよくあります。あなたの場合、2週間以上続いているようなので、慢性下痢の疑いが強いようです。

 かかりつけの病院で早急に検便検査、細菌感染検査を受けられることをお勧めします。細菌感染症があれば、抗菌剤の投与が必要です。便潜血が陽性なら、大腸内視鏡や注腸造影検査を受ける必要があります。もし血便があるなら大腸癌の疑いがあり、注意しなければなりません。あなたには血便などがなさそうですから、とりあえず検便を急いでください。

 現在、糖尿病の治療を受けているようですが、内服薬の投与を受けていますか。糖尿病薬にも下痢をしやすい薬があります。また漢方薬にもあります。下痢しやすい糖尿病薬を服用しているのなら、主治医に相談して、薬を変えてみる方法もあります。また、漢方薬やその他の薬をのんでいる場合、薬物性の下痢も否定できません。下痢が治まるまで中止してはいかがでしょうか。

 さて、下痢になったら粥(かゆ)食や、消化のよい低残渣(ざんさ)食を心がけ、乳製品や脂肪分の多い食事、さらに刺激物や飲酒は慎んでください。薬は、腸管運動抑制薬、収(しゅう)斂(れん)薬、整腸薬などを服用してみてください。また全身の倦怠(けんたい)感、口の中が渇くなどの脱水症状を伴う場合は、輸液療法が必要です。

 あなたは昨年、大腸の手術を受けられ、体力の低下も十分考えられます。冷たいものの取り過ぎやクーラーによる冷え過ぎにも十分気をつけてください。

 下痢で最も注意しなければならないのは、体重の減少が著しい下痢、便潜血が陽性の下痢です。この場合、大腸癌や潰瘍性大腸炎、クローン病のような重要な病気が考えられますから、注意してください。

徳島新聞2001年7月22日号より転載

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