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【質問】 長時間歩くと下半身重く

 60半ばの母が昨年11月、突然腰に激痛が走り、診察してもらったところ腰椎(ようつい)の椎間板(3~4番目)が何かの原因ですり減っているとのことでした。現在、張り薬と骨粗鬆(しょう)症を抑制する薬をいただいています。痛みは徐々に和らいでいますが、長時間歩くと下半身がなまりを付けたように重くなるそうです。じっとしていては足や体が鈍ると思い、散歩や腰痛運動をしていますが、どの程度に抑えるべきか分かりません。また、毎日家族が足腰のマッサージを続けていますがよいのでしょうか。



【答え】 急性腰痛 -症状続けば精密検査を-

佐藤整形外科 院長 佐藤 和之(鳴門市撫養町南浜)

 急性腰痛をきたす疾患には、椎間関節性腰痛、腰椎椎間板ヘルニア、病的骨折(骨粗鬆症、転移性骨腫瘍(しゅよう)、変形性脊(せき)椎症)、分離すべり症、変形すべり症、脊椎炎、後腹膜疾患などがあります。

 ご質問の内容からは特定しかねますが、あなたの場合は腰椎椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、病的骨折などが考えられます。長時間歩くと下半身がなまりを付けたように重くなるとありますが、これは間欠性跛行(はこう)症状でないかと思われます。

 この症状は、慢性動脈閉塞(そく)、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎椎間板ヘルニアの一部などにみられます。腰部脊柱管狭窄症とは、60歳前後から発症しやすく、高齢者に多い腰痛で、歩くと腰から脚にかけて脱力感、脚のしびれなどが起こり、休むと症状がなくなる(間欠性跛行)を特徴とする疾患です。

 脊柱管の狭窄は、生まれつき脊柱管が狭い先天性と、加齢による変化があります。後者は、変形性脊椎症による骨棘(こっきょく)(とげのような出っ張り)の形成、関節突起、椎弓の肥厚、椎体のすべり、椎間板の膨張、圧迫骨折による骨の変形によって狭窄が起こります。

 次に、椎間板ヘルニアは、狭くなった脊柱管内や椎管孔(こう)内に椎間板が飛び出し、神経が締め付けられた状態となるため、間欠性跛行の症状が出ます。

 治療について述べます。保存療法としては、薬物療法(消炎鎮痛剤、環境改善剤)、神経を遮断する硬膜外ブロック、椎間関節ブロック治療、装具療法、体操療法などがあります。

 手術療法は一般的に、保存療法が無効で3カ月以上の高度な間欠性跛行が続き、また膀胱(ぼうこう)直腸障害などの神経障害が著名なときに行われます。手術の結果は良好である場合が多いと報告されています。

 腰痛体操の程度について説明します。腹筋、背筋は腰椎を支える重要な筋肉です。この筋力が低下しますと腰椎の負担が大きくなり、腰痛の原因ともなります。しかし、体操は症状によって行い、むやみに行うとマイナス効果をもたらします。医師の指示に従うことが大切です。

 痛みが強いときは行わず、軽くなったら毎日少しずつ続けることが重要です。休むと筋力はすぐ低下します。無理なく長く続けるようにしてください。歩行はよい全身運動です。ゆっくり歩き、疲れると休みながら少しずつ時間を伸ばし、1時間の連続歩行ができるようになれば十分な筋力といえるでしょう。

 マッサージには、さする、もむ、たたくなどがありますが、これらにより局所的、反射的に血流改善がみられ、鎮痛効果や、はれやむくみの軽減が得られます。家族が行うマッサージは、患者とのコミュニケーションも得られ、よいと思いますが、なお医師の指示を得ることが必要です。

 あなたの場合、発症以来8カ月を経過した現在、なお症状が大きく残っているように見受けられます。腰痛が慢性化したものであるかどうか確定する必要があるのと、新たな治療方針を決めるためにも、一度専門医でレントゲン撮影、CT、MRIなどの精密検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2001年7月29日号より転載

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