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【質問】 姿勢悪く日常生活に支障

 20代後半の女性です。姿勢が悪く猫背気味で脚もO脚です。すぐに座りたくなったり、じっとしているのが苦痛だったりするときがあります。治したいのですが、日常生活では何に気をつけたらよいでしょうか。



【答え】 猫背 -意識改革で矯正可能

真鍋病院 院長 谷口 博美(美馬郡美馬町駅)

 まず、体の支柱である脊椎(せきつい)について説明します。図のように脊椎は側面から見ると、引き伸ばしたS字型をしていて、頸(けい)椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯、骨盤後傾という生理的湾曲を形成しています。この生理的湾曲を超えたものが姿勢異常です。

 人はバランスをとるために、どれか一つのカーブの増強または減少を、他の二つのカーブで代償しようとする姿勢をとります。この脊椎の平衡を保つための姿勢は、筋肉、靭帯(じんたい)などの支持組織に疲労を生じさせ、あなたのようにすぐに座りたくなったり、じっとしているのが苦痛だったりする原因となるわけです。

 朝はシャンとしているのに、だんだん背中が丸くなってきて夕方には背部の倦怠(けんたい)感や腰背部痛もひどくなる、などはこのためです。

 また、脊椎は前後方向から見るとほとんど真っすぐですが、側方向への湾曲がある場合は、側弯症といい、姿勢異常の原因となります。これは特発性、麻痺(まひ)性、先天性などに分類されています。

 姿勢異常をきたすものとして、脊椎自体の異常(先天性椎体奇形、くる病、ショイエルマン病、カルヴェ扁平(へんぺい)椎、神経線維腫(しゅ)症、脊椎腫瘍(しゅよう)、外傷性脊椎炎、強直性脊椎炎、脊椎カリエス、骨軟化症、骨粗鬆(しょう)症、脊椎圧迫骨折、変形性脊椎症、リウマチ性病変など)の有無を専門医でチェックしてもらう必要があります。

 同時に、下肢、骨盤の形態異常(股(こ)関節や膝(ひざ)関節疾患、骨折などによる脚長差など)も、骨盤の傾斜を増し、脊椎の湾曲に影響を与えますので、忘れてはならないチェック項目です。

 ご質問の内容からは特定しかねますが、あなたの姿勢異常は「習慣性円背」ともいわれるもので、自らの努力で十分矯正できるものではないでしょうか。

 姿勢は感情の身体的描写であり、その人の表れでもあるといわれています。また習慣、年齢、性別、職業、生活様式などにも左右されます。これは学童期の不良姿勢が成人になっても続いていたり、疲労し落胆した人が背を丸め、肩を落として生活を続けていたりする場合も考えられるでしょう。

 同じ姿勢や無理な姿勢での長時間作業、柔らか過ぎる寝具や腹臥(が)位での就寝、不適当な高さのいすでの座位、ハイヒールを履いての長時間立位・歩行、腹部の出っ張った肥満、不適当な衣類・下着なども生理的湾曲に過度の負担を強いるものです。このような生活習慣は避けてください。

 正しい姿勢とは、「身体の重心線が通るべきところを通り、身体の各部分の位置が正しい関係にあること。見た目に美しく機能的で、たやすく他の姿勢、動作に移ることができること。エネルギー消費が少なく長時間保持していても疲れにくいもの」と考えられます。鏡に自分を映し、正しい姿勢を見つけるのも一つの方法ではないでしょうか。

 腰背筋や腹筋群の弱化に基づいて起きると考えられる不良姿勢や痛みに対しては、全身を使っての体操、水泳などの運動療法が有効と考えられます。ただ急激に始めるのではなく、ウオーミングアップの後、徐々に程度と時間を増していくことが大切です。

 運動療法の目的は支持組織、筋肉などを強化するためですが、疲れるような長時間の運動は避けるべきです。適切な運動により腹筋背筋の筋力アップを得るようにしてください。

徳島新聞2001年8月5日号より転載

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