徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

ひうら小児科 日浦 恭一

 インフルエンザ菌b型(ヒブ)は乳幼児の重症感染症の原因菌として重要な細菌です。とくに全身感染症の中でもヒブによる髄膜炎はもっとも注意すべき感染症です。

 乳児の髄膜炎の原因菌の中でヒブはもっとも頻度の高いもので、全国調査によると小児人口10万人あたり8.5人程度の発生率と言われます。ヒブによる髄膜炎はほとんどが5歳未満ですから、日本では毎年500人から600人の子どもがヒブによる髄膜炎にかかっている計算になります。

 髄膜炎の症状には特別な症状があるわけではありません。初発症状は発熱、頭痛、嘔吐、不機嫌、けいれんなど一見普通のかぜを思わせる症状と異なるところはありません。髄膜炎はこのような症状や簡単な血液検査だけで正確な診断はつきにくいものです。

 上気道に定着したヒブが血液中に侵入して菌血症を起こすとヒブが全身に散布されて髄膜炎などの全身感染症を起こします。

 菌血症の症状は発熱または低体温、不活発、傾眠、不機嫌や哺乳不良、発汗、嘔吐、易刺激性などがありますが、特別他の感冒と区別できるような症状はありません。

 髄膜炎の症状は感冒症状に続く発熱、嘔吐、易刺激性からけいれん、意識障害へ進行します。項部硬直などの髄膜刺激症状と呼ばれる髄膜炎特有の症状は見られないこともあります。

 髄膜炎の診断の確定のためには髄液検査が必要です。髄液からヒブを検出することが正確な診断につながります。

 ヒブ髄膜炎の治療には適切な抗菌剤の投与が必要です。ヒブ髄膜炎の治療が難しいのは、抗菌剤の髄液内への移行が悪く大量の抗菌剤が必要なこと、ヒブは抗菌剤に耐性を示すために、使用可能な抗菌剤が限られる点にあります。

 治療効果が悪ければ患者さんは亡くなるか後遺症を残します。ヒブ髄膜炎にかかった子どもの約5%が死亡、約25%に後遺症が残るとされます。

徳島新聞2009年3月18日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.