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ひうら小児科 日浦 恭一

 最近、ヒブワクチンという言葉を新聞やテレビで目にすることが多くなりました。今月はこれまであまりなじみのないヒブおよびヒブワクチンについて考えてみました。

 ヒブとはヘモフィルス・インフルエンザ(インフルエンザ菌b型)つまりHibのことです。インフルエンザ菌は血清型によってaからfまでに分類されます。この中でb型菌(ヒブ)が臨床的にもっとも問題になるのです。

 インフルエンザ菌と言うと冬に流行するインフルエンザとまぎらわしいのですが、それはこの菌が1892年にインフルエンザの流行時にインフルエンザ患者の喀痰や肺組織から発見されたためです。その後1933年にインフルエンザウィルスが発見されて、ウィルスによるインフルエンザ感染症とヒブは無関係であることが明らかになりました。

 ヒブは人にのみ感染する細菌で、人の鼻やのどで保菌されます。保菌者は人口の1~5%いるとされますが、保育施設などの小児の保菌者は25%に上ると考えられています。ヒブは唾液を介して飛沫または直接接触して人から人に伝播します。

 ヒブは病原性が強く、髄膜炎や肺炎、敗血症、喉頭蓋炎など全身の重症感染症を起こすことが知られています。ヒブが感染して発病するのはほとんどが5歳未満の乳幼児です。乳幼児の重症感染症の原因細菌としてヒブはとても重要なものです。

 ヒブに対する免疫は5歳以上の多くの子どもは獲得しています。これに対して、0歳児ではほとんどの児が免疫を持っていません。

 0歳児の細菌感染症は診断が非常につきにくいものです。とくに乳児期早期の感染症では典型的な症状が現れにくく、診断がむずかしいものです。さらにヒブは抗菌剤に対して耐性を示すことが多く、ほとんどの内服抗菌剤では効果が見られません。

 診断がつき難く、治療が難しいヒブに対しては乳児期早期からの予防が大切なのです。

徳島新聞2009年3月11日掲載

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