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ひうら小児科 日浦 恭一

 タバコの煙に含まれる物質の中で大切なのはニコチンです。ニコチンはタバコの主成分でタバコに依存性の生ずる原因物質です。

 ニコチンの吸収は非常に速く、喫煙して煙の中のニコチンが肺に入り、毛細血管から吸収されて全身に運ばれ、7秒で脳に到達します。ニコチンは脳内のニコチン受容体と結合し、脳から抗不安作用のあるセロトニン、幸せな気分にさせるドーパミン、血管収縮と血圧上昇や興奮作用のあるアドレナリンを生じさせることが知られています。

 タバコを止められなくなるのはセロトニンやドーパミンの作用によるものです。喫煙者は常に体内のニコチン濃度を一定に保とうとして喫煙をくり返すのです。

 子どもに禁煙教育が大切な理由にはいくつかあります。まず初めて喫煙するのが小学生か中学生であること喫煙年齢が低いほど習慣性や依存性を獲得しやすいこと喫煙開始年齢が低いほど禁煙が行い難いこと喫煙期間が長いほど呼吸器障害が大きくなること母親の喫煙は影響が大きく、その喫煙率はこの数年減少していないことなどです。そのために小児期からの禁煙教育はとても大切なのです。

 海外では多くの国の政府が喫煙の害を積極的に国民に知らせ、タバコに高額の税金をかけて価格を上げることで国民の喫煙率を低下させる政策を実施しています。

 しかし日本ではタバコの有害性を国民に知らせず、価格も低く抑えてタバコの売り上げを増やして、タバコからの税収を重視する政策をとっています。

 未成年者の喫煙は法律で禁止されています。これは喫煙者を罰するための法律ではなく、未成年者のからだを守るための法律です。未成年者よりもさらに弱い存在である胎児と乳幼児の受動喫煙を防ぐためにはさらに喫煙率の低下を目指す方策がとられる必要があるのです。

徳島新聞2009年2月25日掲載

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