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県民の皆さまへ

 今月はウイルス性胃腸炎、嘔吐(おうと)下痢症についてお話しています。嘔吐下痢症はその原因ウイルスによって流行時期が少し異なります。ノロウイルスは秋から冬に、ロタウイルスは冬から春に流行しますが、嘔吐下痢症は1年を通して見られます。これは嘔吐下痢症の原因がノロウイルスとロタウイルスだけではなく、アデノウイルスやエンテロウイルスなどその他多くのウイルスが原因となるからです。

 昨年12月に全国で大流行したノロウイルスによる胃腸炎は突然はじまる嘔吐に発熱と下痢をともなうものです。症状は比較的軽症ですが、このウイルスは感染力が強く集団発生することが特徴です。さらに乳幼児だけでなく高齢者までの全年齢層に感染しますから注意が必要です。

 ノロウイルスの伝染力が強いのはごく少量のウイルスでも感染して発病するからです。また症状が消失した後も長くウイルスが排出されますから、症状のない人からもうつることがあります。

 さらにこのウイルスには何度もかかることがあります。これはノロウイルスに感染した後でも長期に渡る免疫ができにくいことや、ウイルスに多くの型があることなどが原因と考えられています。

 嘔吐下痢症が流行する時期に注意することは嘔吐や腹痛を来す他の疾患を見落とさないことです。とくに乳幼児ではひどい不機嫌や全身状態の悪い子どもを見た場合に腸重積など他の重篤な病気を見逃すようなことがあってはなりません。

 嘔吐下痢症を起こす多くのウイルスに対して有効な薬剤はありません。肝心なことは感染症に対する治療よりも感染症を予防することです。

 嘔吐下痢症はウイルス性の胃腸炎ですが、人から人にうつる感染症でもあります。患者さんが出た集団ではウイルスが長期間排出されている可能性があります。保育所、幼稚園、学校、病院、介護施設などでは保育士、教職員、医療従事者や介護職員などがもっとも注意する必要があります。

2007年1月23日掲載

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