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 乳幼児の嘔吐で最も多い原因は嘔吐下痢症によるものです。典型的な嘔吐下痢症は最初に急性の嘔吐が大量、頻回に見られ、これに発熱や下痢が続きます。多くの場合には流行や患者さんとの接触があり、診断に苦しむことはありません。しかし嘔吐下痢症の流行中に他の原因で嘔吐している患者さんに出会うと、他の原因疾患を見落としてしまうことがあります。とくに緊急処置が必要な腸重積やヘルニア嵌頓(かんとん)、虫垂炎などの外科的疾患や髄膜炎、頭蓋内出血など中枢神経疾患を見逃すと大変です。また薬物や毒物の可能性を念頭に置くことも必要です。重篤な疾患でも嘔吐が頻回で大量に吐くとは限りません。嘔吐を止めることよりも原因を特定することが最も大切なのです。嘔吐は体内に侵入した異物や毒物を体外に排出することが本来の役割です。従って、いたずらに嘔吐を止めることは異物や毒物を体外へ排出することを遅らせることになります。また嘔吐を抑えることで原因疾患の発見を遅らせるようなことがあってはなりません。さらに嘔吐を抑える薬の中には垂体外路症状と言う不随意運動などを来すものもあり安易な使用は控えるようにしたいものです。

 重篤な原因疾患による嘔吐が否定された場合には嘔吐に対する処置が行われます。この時、嘔吐下痢症が原因として最も疑われる場合には、嘔吐は1日くらいで止まることを両親に説明して安心させる必要があります。嘔吐は子どもにとってつらい症状であるばかりでなく、両親にとっても不安で眠れなくなる症状だからです。経口摂取が出来ないときには無理に食事を摂らせる必要はありません。飲みやすいお茶やイオン飲料で咽喉を湿らせる程度に少量の水分を頻回に与えます。固形物や乳製品などは嘔吐を誘発することがあるので中止します。この間に高熱や激しい下痢を伴い脱水症が疑われる場合には輸液を考えます。嘔吐してもその後で遊んでいるとか食欲がある場合には心配することはないと思われますが、不機嫌がはなはだしい場合や顔色不良が続く場合には小児科医を受診する必要があります。

2004年4月27日掲載

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