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 下痢とは便の固形成分の割合が低下し、水分の割合が増加した状態で、排便の回数、量の増加を伴い、水分および電解質の喪失が見られるものを言います。従って便の性状が下痢であっても水分や電解質の喪失を来たさないものは下痢ではありません。とくに新生児や乳児の中で母乳栄養児の便は軟らかく下痢状ですが、機嫌も良く食欲もあり体重増加も順調であれば、これは母乳便であり病気ではありません。これに対して機嫌が悪く食欲がないとか、体重増加不良などが見られる場合には病的なものと考えなければなりません。

 便中の水分が80%以上になると軟便ないし泥状便、90%以上になると水様便となります。便中の水分増加が起こって下痢になるのは、腸液の分泌が増加したり、腸管による水分の吸収障害が起こったり、また腸管の動きが亢進することで便が消化管を通過する時間が短縮することによります。これらの病態は腸粘膜の炎症や、細菌毒素など化学物質の刺激、消化吸収障害、アレルギー、心因などが原因となって発生すると言われます。

 栄養状態や衛生状態の悪い地域では子ども達が下痢のために命を落とすことは珍しいことではありません。下痢にともなう脱水症でも重症なものは致命的となります。最近でも全世界では下痢にともなう脱水症で毎年、200万人くらいの子どもたちが命を落としていると言われています。日本でも今から40~50年前までは下痢にともなう脱水症で生命を失う子どもが大勢いましたが、経済的に豊かになり栄養状態が良くなり、環境や衛生状態が改善することによって、下痢から脱水症を来たす子どもたちが少なくなってきました。また少子化の影響で、子どもの世話がこまめに行われるようになり、重症の脱水症が起こる前に気付かれるようになりました。また嘔吐や下痢がある場合には、水分や電解質を十分に補給し、脱水症を予防することが大切であることが情報として多くの人に理解されたのだと考えられます。今月は下痢や脱水症について考えてみましょう。

2004年5月11日掲載

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