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県民の皆さまへ

 先週は体温の調節についてお話ししましたが、今週は発熱について考えてみましょう。

 発熱によって子どもは不機嫌になり食欲が落ちて元気がなくなります。とくに乳幼児が初めて熱を出した場合など家族にとっては心配なものです。しかし発熱は悪いもの恐いものとは限りません。発熱にも大切な役割があります。発熱の生理的な機序について考えてみましょう。

 発熱の原因で最も多いのは感染症です。感染症の原因には細菌やウイルスがあります。細菌やウイルスなどが体内に侵入すると、体内では免疫に関与する白血球からサイトカインという物質が分泌され免疫機構が活性化されます。この中の一部のサイトカインがプロスタグランジンという物質を産生して、これが体温調節中枢を刺激し、体温の設定温度を上昇させます。

 体温調節の中枢は視床下部にあるとされます。平熱は体温を常に一定の温度に調節することによって決まりますが、発熱は正常よりも高い温度に設定されて上昇した平熱のことです。平熱がいつもより高い温度に設定されると、身体は寒い環境に置かれた時のような反応を起こします。筋肉はふるえ体内の代謝は亢進し熱を産生し、皮膚血管は収縮し熱放散は減少します。この時、身体は寒さを感じます。このような反応は非常に不愉快なものですが生理的なものです。生理的に起こった発熱は普通、42℃を超えるような異常な高熱になることはありません。

 感染症で一定の免疫反応が終了すれば解熱します。解熱は体温の設定温度が正常に戻り体温が下降することです。筋肉のふるえや代謝亢進は止み皮膚血管は拡張し手足や顔は赤くなり発汗が増加し、その後に体温は下降します。

 以上のように発熱も解熱も身体の中で起こっている生理的な反応ですから、発熱初期に解熱剤を使用してもすぐに下がることはありません。身体が寒さを感じている時に冷却しても心地よいはずがありません。発熱に対する解熱処置には、発熱の時期を十分に見極めて行う必要があります。

2003年8月19日掲載

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