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 インフルエンザが怖いのは神経系の合併症が見られることです。インフルエンザは高熱を伴う疾患ですから乳幼児では熱性けいれんが多く見られます。熱性けいれんは普通、1~2分で自然におさまり、後遺症を残すことはありません。これに対して、急性脳症によるけいれんは治療に抵抗してなかなか止まらず、意識障害や他の全身の様々な症状を伴い、急速に進行して悪化し、死亡率も高く神経学的後遺症も残りやすい非常に恐い疾患です。

 インフルエンザワクチンの接種率が極端に落ち込んだ頃から、インフルエンザによる急性脳症が増加したと言われています。また特定の解熱剤が脳症の発生に関与することや、死亡率を高くしていた可能性があります。この数年、ワクチン摂取が評価されたことや、アセトアミノフェン以外の解熱剤の使用を控えるようになったことで、脳症の発生率は低下していると言われます。

 インフルエンザ脳症のはっきりした原因はわかっていません。鼻汁や咽頭からはウイルスが検出されるのですが、脳組織からはウイルスは分離されていません。またインフルエンザの発病と神経症状発生までの時間は、24時間以内が30%、48時間以内が70%と、きわめて早期に神経症状が発現します。さらに5歳以下の発病が60%と大部分を占めています。脳症の初発症状に特別なものはありません。発熱や頭痛という症状で始まり、小児では不機嫌や嘔吐だけの場合もあります。脳症が発生するとけいれんが持続し、重い意識障害が見られます。けいれんは一般の熱性けいれんの治療に反応せず重積けいれんとなります。インフルエンザ関連脳症の中にはライ症候群や急性壊死性脳症など特別な脳症が含まれ、詳細な検査と集中治療が必要とされます。

 インフルエンザに対する抗ウイルス剤が使用できるようになって、これらの脳症に対しても治療効果が期待されていますが、薬剤は早期に使用する必要があり、まずインフルエンザに罹らないように予防することが大切だと言えます。

2002年12月24日掲載

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