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 小さな子どもの耳が聞こえているのかどうかを正確に判断することは簡単ではありません。「音に対する反応はありますか」と質問をしますと、ほとんどの人は「はい」と答えますが、大きな音には反応しても、小さな音や低い声に反応しているのかどうかは分からないことがあります。聴力の問題は言葉の発達と大きな関連があります。新生時期に難聴の有無を正確にチェックすることが大切だと考えられます。

 一般に難聴は数百人に一人の確立で出生すると言われています。また以下に述べるようなハイリスクの要因を持った子どもでは数十人に一人の確立になるとされます。リスク因子としては、遺伝子的難聴、胎内感染、頭部の奇形、低出生体重児、新生児仮死、重症の呼吸障害、重症の黄疸、重症の感染症やそれに使用した聴神経毒性の抗生剤などです。これらのハイリスクと呼ばれる新生児の聴力をチェックすることは当然ですが、ハイリスク児のみの検査では半数の聴力異常児を見逃すと言われています。従って、すべての新生児の聴力を検査することはとても大切なことです。

 最近では、産科で新生児の聴力検査をしている所が増えてきましたが、ハイリスク児以外は保険の対象外で、健康な新生児全員が検査を受けるには至っておりません。

 検査法にはABR(聴性脳幹反応)とOAE(耳音響放射)の二つの方法が使われていますが、それぞれ数パーセントの疑陽性が存在します。ABRは正確ですが器械の値段が高く、検査法がやや煩雑で時間がかかります。OAEは値段が安く簡単ですが、やや疑陽性の率が高いとされます。いずれにしても早期に聴力のスクリーニングを行い、再検査でも異常があれば精密検査を受けるようにしましょう。聴力障害は早期に発見して治療、教育の機会を与え、言葉の発達に障害が出ないように配慮する必要があります。今後、行政が新生児の聴力検査に補助を認めてくれるようになることを望んでいます。

2002年8月27日掲載

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