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 夏かぜが流行する頃に髄膜炎が多発することがあります。夏かぜのウイルスが原因で起こるウイルス性髄膜炎です。髄膜炎には髄液から細菌が検出される細菌性髄膜炎と、これ以外の無菌性髄膜炎があります。無菌性髄膜炎の中で最も多いのはウイルス性髄膜炎です。

髄膜炎の主な症状は高熱、頭痛、嘔吐に頚(くび)の後が硬くなること【項部(こうぶ)硬直】が特徴とされます。髄膜炎を起こすと頭蓋内で髄液の産生が増加して頭蓋内圧が亢進し、髄膜刺激症状と呼ばれる頭痛や嘔吐が見られるようになりますが、子どもの髄膜炎にこれらの症状がすべてそろう訳ではありません。元々子どもの頭痛の訴えははっきりしませんし、項部硬直も緊張している時に判断するのは難しいものです。子どもの不機嫌さや全身状態で髄膜炎の存在を疑うよりありませんが、実際には髄液検査をしなければ確定診断がつかない場合が多いものです。ウイルス性髄膜炎はほとんどが自然に治り、予後の悪い病気ではありませんが、その急性期には頭痛などの苦痛が激しいものです。診断確定のために髄液検査をすることは、髄液を排除することで脳圧が下がって頭痛などの症状を軽減することにつながります。しかし最も大切なのは、ウイルス性髄膜炎と治療法の異なる他の脳炎や細菌性髄膜炎を鑑別することです。

 ウイルス性髄膜炎の原因になるウイルスは様々ですが、夏かぜのウイルスであるエンテロウイルスが最も多くおたふくかぜウイルスがこれに続きます。結核性髄膜炎や真菌による髄膜炎はウイルス性髄膜炎の髄液所見と区別がつかないことがあります。また高熱でけいれんを起こしたのか脳炎のためのけいれんなのか区別が難しい場合もあります。

 ウイルス性髄膜炎は後遺症を残すことは少ないとされていますが、乳幼児がかかった場合にはその後の発達に充分注意する必要があると考えられています。

2002年6月25日掲載

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