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【質問】 無意識に首を振っている

 55歳の女性です。40歳前から、首をよく振るようになりました。自分が分かるときと、分からないときがあります。疲れたり、肩が凝ったり、ストレスがたまったりすると余計に振るように思います。脳外科でMRI検査を受けましたが、異常はありませんでした。母も少し振るので遺伝なのか、とも思います。両親が糖尿病で、私も予備軍です。また、鼻炎にも悩まされていますが、関係があるのでしょうか?2年前からは右手の薬指だけがしびれるようになりました。友達には「難病の前触れでは」と言われ、心配しています。



【答え】 不随意運動 -ストレス軽減が大事-

徳島大学医学部 脳神経外科講師 宇野 昌明

 質問の女性のように、自分の意志とは関係なく出現する異常な運動を「不随意運動」といいます。不随意運動にはいろいろなタイプがあります。大きく分けると、ほぼ規則正しく動く「振戦」と、いろいろな部位で不規則に動く「ディスキネジア」に分類されます。

 質問の女性のような動きは広義の「ディスキネジア」の範疇(はんちゅう)に入る「チック」といわれる不随意運動でないかと思われます。もし、首が片側に傾き、あごが反対側上方に向くような動きであれば「痙性斜頚(けいせいしゃけい)」と鑑別する必要もあるでしょう。

【チックと鑑別疾患】

 チックとは顔、首、肩などに比較的急激で、繰り返し起こる運動です。最も多いのは顔面に起こるチックで、顔をしかめたり、唇をなめたり、額にしわを寄せたりする動きです。首では首の筋肉に限局した痙攣(けいれん)によって頭を回したり、首を傾けたり、屈曲したりする動きになります。チックの特徴は一定時間随意的に抑制できる点で、随意的に動きを抑制できない痙性斜頚と異なります。

 その他の鑑別疾患として片側のみに生じ、眼輪筋から口角、首の筋肉にかけて規則的な筋収縮が見られる片側顔面痙攣があります。これはチックとは異なる仕組みで起こるので、質問の女性の症状は顔面痙攣ではないようです。

【チックの原因】

 このような動きは、大脳深部(線条体)の脳内神経伝達物質の機能異常が考えられています。脳梗塞(こうそく)や脳出血、あるいは脳腫瘍(しゅよう)が大脳深部で発生すると不随意運動が見られることがありますが、質問の女性は脳外科で受けたMRI検査で異常がなかったとのことですので、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍はないものと思われます。

 もう一つの原因は心因的要素、すなわちストレスなどです。質問の女性は肩こりやストレスを感じたとき、首を振ることが多くなるとのことですので、ストレスの関与が考えられます。

 脳梗塞や脳出血で不随意運動が起きる場合は、片麻痺(まひ)などの局所症状が出た後に不随意運動が出現し、脳血管障害が治癒する過程で不随意運動は消失することが多いです。片側顔面痙攣は、脳幹を養う脳底動脈の枝が顔面神経の脳幹から出るところで圧迫されることで起きます。

 また、通常のチックでは遺伝は認められていませんが、重症型で汚言(おげん)や痙攣を伴うものは家族内発生が報告されています。

【チック、その他の不随意運動の治療】

 チックに対しての治療は薬物療法、心理療法があります。薬物療法としては、神経伝達物質の補充として少量のドーパミン製剤の投与、あるいは抗不安薬の投与が行われます。重症型ではハロペリドールなどの抗神経薬が使われます。これらの投与は脳神経外科や神経内科、小児科(神経内科専門)の専門医に診断してもらい、処方してもらってください。

 また、ストレスなどの軽減を図ることが大事ですが、ストレスによって症状が増悪する場合は精神科の専門のカウンセリングを受けるのも良いと思われます。質問の女性は鼻炎があるとのことですが、これもストレスの原因となります。早めに耳鼻科か内科の診察を受けたらどうでしょうか。

 片側顔面痙攣は、脳神経外科で圧迫している血管を神経から外す手術を受けると完全に顔面痙攣を消失させることができます。このほかの不随意運動は薬物療法が主体となりますが、脳神経外科で行われる定位脳手術で不随意運動が消失することもあります。

 今回の女性の、右手のしびれや両親が糖尿病であることは、直接この病気とは関連はないかもしれません。いずれにしても、脳神経外科や神経内科の専門医に現在の症状を相談されることを勧めます。

徳島新聞2003年3月16日号より転載

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