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【質問】 手足の血管が盛り上がってきた

 70歳の女性です。1年くらい前から手足の血管が皮膚から盛り上がってきました。足はひざより下、手はひじよりも先に、青や赤紫色の細い血管が見えて、人前に出ることができません。痛みもかゆみもありませんが、治るのでしょうか。



【答え】 静脈瘤・紫斑


-静脈瘤 硬化剤を注入 紫斑 多くは自然に消失-


徳島県立海部病院 大田 憲一

 診察していないので正確なことは言えませんが、血管が皮膚から盛り上がっているということは下肢については静脈瘤(じょうみゃくりゅう)と思われます。立ったままだとひどくなり、寝たり、足を挙げたりするとよくなるようなら、間違いありません。

 中高年の女性で、ひざから足首までの部分の血管が浮き出て曲がりくねっている状態をよく見かけます。これは動脈ではなく静脈で、この浮き出た静脈を「下肢静脈瘤」といいます。

 立っているときには、静脈内の血液は重力に逆らって心臓に戻っていきます。静脈には弁が付いているので、このような血液の流れが可能です。ところがこの弁が正常に働かなくなり静脈弁不全になると、立っているときに静脈内の血液が逆流して静脈瘤ができるのです。

 妊娠、出産を機にできたり、長時間の立ち仕事をしている人も、脚に血液がたまりやすく、静脈瘤になりやすいといえます。年齢を重ねるにつれて、少しずつ目立つようになります。

 静脈瘤ができる場所と形態はさまざまです。直径1~2センチの太いものから、細く網目状に拡張したもの、さらに1ミリ以下のクモの巣状になったものなどもあります。

 見た目が悪いといった美容上の問題のほか、ひどくなった場合、立っていると足が重く、だるくなってきます。さらに重症になると、血栓(けっせん)性静脈炎を起こして赤く腫れて痛みを伴います。長期間、放置すると治りにくい下腿(かたい)潰瘍(かいよう)ができることもあります。

 「血管が浮き出て気持ちが悪い」「格好悪くてスカートがはけない」「人前で恥ずかしい」などの外見上の問題で治療に訪れる人はたくさんいますが、これらは軽症に分類されます。

 治療は、硬化療法が中心になります。これは拡張した静脈に硬化剤と呼ばれる薬剤を注入して静脈の内側の壁と壁をくっつけたり、血栓を作らせて固めてしまいます。こうするとやがて静脈瘤は消失していきます。そのほか最近では、網目状・クモの巣状静脈瘤に対して、レーザー治療が有効であるとの報告もあり、注目されています。

 症状の重い患者には手術で拡張した静脈を引き抜いてしまう方法(ストリッピング)や結紮(けっさつ)硬化療法があります。

 処置を希望しない患者には、弾力ストッキングの着用を勧めています。静脈瘤を外から圧迫することによって静脈瘤がふくれる(うっ血する)ことを防ぎます。手軽ですが、夏でもはき続ける必要があります。<1>ストッキングタイプ<2>パンティーストッキングタイプ<3>ハイソックスタイプ-などがあり、圧迫力には、強・中・弱の三段階あります。進行の防止には効果的ですが、治るわけではありません。

 手と腕のほうも、やはり直接診察しないと正確な判断がつきませんが、こちらはおそらく皮膚か皮下への出血(紫斑)だと思われます。打撲後の内出血と同じ状態です。年齢を重ねるごとに血管周囲の組織がもろくなり少しの刺激で静脈が破けて出血し、その後の吸収が遅れて青や紫色の斑点としてしばらく残ったものです。自覚症状はなく、自然になくなることが多いです。

 紫斑と似ている皮膚の変化として<1>紅斑<2>老人性血管腫<3>老人性色素斑-などがあり、これらと区別をつける必要があります。老人性紫斑は日常的にみられるもので、加齢とともに増え、70代で30~40%みられるとのデータもあります。治療は、皮膚の保護、ビタミンC・Eの内服などがありますが、治療しなくてもほとんど問題は起きません。ただ、ほかの原因の紫斑だったり、別の皮膚疾患だったりすると、治療法が違ってきます。特に、皮膚以外に出血症状がないか、注意する必要があります。

 例えば、鼻血、歯ぐきの出血、性器出血、血尿、血便などです。もしそうした症状があれば、血液病などの治療が必要な病気である可能性がありますので、急いで医師にかかってください。血液検査などを受けて、血液や肝臓の病気でないことを確認しておく必要があります。

 上・下肢、いずれの場合も、まずしっかりと診断をつけることが大事です。一度、皮膚科、形成外科、外科、血管外科などで相談してください。

徳島新聞2003年9月28日号より転載

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