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【質問】 両手の指すべてにしもやけ

 34歳の女性です。5年ほど前から、両手の指すべてにしもやけができます。昨年はひどい状態になったので、皮膚科を受診し、ビタミンEを服用しました。今年は、予防として10月からビタミンEを飲んでいたのですが、やはり11月初めにしもやけができました。しもやけができる原因と予防法、皮膚の構造を教えてください。



【答え】 凍瘡 -血行よくし保温に努める-

健康保険鳴門病院 皮膚科 長江 哲夫

 しもやけは医学的には凍瘡(とうそう)と呼ばれています。まず、皮膚の構造から見てみましょう。

 皮膚は、表面から表皮、真皮、皮下組織の3つの部分で構成されています。表皮の大部分は角化という変化を起こす細胞(角化細胞)が、お城の石垣のように積み重なっています。真皮は、膠原(こうげん)線維や弾力線維という線維成分などから成っており、血管、リンパ管、神経が豊富に見られます。皮下組織は、皮下脂肪とも呼ばれている脂肪細胞のある部分です。

 真皮の血管は、細かい網目状の構造をしており、外気が高いときには拡張し、低い時には収縮して、血流を調整することで体温調節機能の一部を担っています。凍瘡では、この真皮の血管の機能がうまく働かないために局所的な血行障害が生じ、その結果、血管壁の障害やその周辺に炎症という変化が起こり、発赤や腫れなどの症状を生じてきます。

 凍瘡は、5度前後の気温で1日の気温の差が10度前後のとき、すなわち晩秋や早春のころにできやすいといわれています。さらに、きつい靴を履くというような血行障害が重なるとできやすくなります。

 このような環境的因子以外にも、家族に発症することが多いことから、血管機能や多汗症などの遺伝的、素因的因子、あるいは栄養状態や内分泌的な異常も発症の一因と考えられています。

 凍瘡は、症状によっていくつかのタイプに分けられています。大部分は、指全体が赤紫色に腫れるタイプと、1cm前後までの赤い硬いしこりが見られるタイプです。いずれも、学童期や思春期によく見られますが、前者は主に幼少児、後者は年長者に多く見られます。また、性別による発症頻度は、低学年学童では差がありませんが、年齢とともに性差が著明になり、男性では高学年学童まで、女性では成人後まで増加するとされています。

 治療は、血行を良くする目的でビタミンEを内服したり、ビタミンE含有軟膏やヘパリン類似物質含有軟こうを外用します。また、腫れや痛み、かゆみが強いときには抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤の内服と副腎(じん)皮質ホルモンの外用剤をよく用います。

 予防法としては<1>マッサージや温浴によって血行をよくする<2>寒いときには、ゆったりした手袋や靴下をはいて保温に努める<3>急激に皮膚温が下がらないように、水仕事や汗をかいたときに水気をよくふき取る-が挙げられます。

 質問の女性の場合、30歳ごろから凍瘡ができ始めたようですが、前述した発症因子に当てはまるものはありませんでしょうか。当てはまらなければ、全身のだるさや関節痛などの体調の変化はいかがでしょうか。

 まれにですが、凍瘡状狼瘡(ろうそう)や全身性エリテマトーデスという膠原病でよく似た症状が現れることがあり、鑑別が必要なこともあります。疑わしければ、血液検査や皮膚の組織検査が必要です。もう一度、皮膚科の先生に相談してみてください。

徳島新聞2002年12月29日号より転載

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