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徳島県小児科医会 日浦恭一

 体内の環境は常に一定に保たれています。とくに大切なのは水分のバランスです。水分の摂取量と排泄量が同じであればそのバランスは保たれます。しかし子どもは成長にともなう水分が必要な上に、排泄される水分量も多いために、成人に比べて水分が多く必要とされます。そこで水分の出入りのバランスが崩れやすくなります。



 子どもの水分排泄量が多いのは、腎臓の機能の未熟性によるものです。腎臓は水分を最も多く排泄する臓器です。これは摂取した蛋白質の分解産物による窒素成分を老廃物として体外に排泄するものです。腎臓が未熟な場合には尿を濃縮して少量の尿中に多くの老廃物を排出することが出来ません。老廃物を排出するためには成人よりも多くの水分が必要なのです。

 また子どものからだは体重の割に体表面積が大きいために発汗の量が多くなります。さらに呼吸機能が未熟なことで呼吸は浅く速くなり、肺から排出される水蒸気の量が多くなります。発汗や呼気中の水蒸気の量は目に見えない形ですが、水分排泄には大きな影響を及ぼしています。これは発熱時や呼吸器症状がある場合に著しく増加します。

 子どもの水分必要量は成人に比べて多いものです。病気で水分の喪失量が増加した場合や、嘔吐や下痢などのために水分の摂取量が減少した場合には脱水症を起こす危険性が増します。発熱時、嘔吐や下痢がある場合には食欲が低下しますから、必要な水分の補給が出来ていない可能性があります。尿量の減少など脱水症の兆候に注意して十分な水分補給を心掛けることが大切です。

徳島新聞2011年3月16日掲載

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