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 百日咳は激しい咳を特徴とする乳幼児の病気ですが、年長児や大人もかかることがあり咳が長く続きます。しかし乳児が百日咳にかかると大変です。特に2~3ヵ月未満の乳児が百日咳にかかると、激しい咳込みのために哺乳困難や睡眠障害を来たすばかりでなく、肺炎や脳症など重篤な合併症を起こし、中には死亡することもあると言われます。ワクチンの普及により百日咳にかかる人は減少していますが、最近でも時々、百日咳の発生を見ることがあります。今月は百日咳とワクチンについて考えてみました。

 1970年代半ばに百日咳や種痘などの予防接種による副作用の裁判が全国的に行われ、一時的に百日咳ワクチンが中止されていた時期があります。当時のワクチンには副作用が多く、後遺症に苦しむ患者さんが大勢いたため、ワクチン接種を中止するに至ったものと思われます。しかしその後、全国で百日咳の流行が見られ、大勢の百日咳患者が発生しました。百日咳ワクチンには副作用はあるものの、百日咳の流行阻止には有効であったことが証明されました。その後、副作用が少ない新しいワクチンが開発されて、接種再開の結果、百日咳の発生頻度が減少し現在に至っています。

 最近、徳島でも一部の保育園で百日咳の発生が見られたり、成人の百日咳が流行して、百日咳が決して過去の疾患ではないことが示されています。母体由来の百日咳抗体は生後早期に消失して、感染防御にはほとんど役に立たないと言われます。従って、新生児でも百日咳にかかる可能性があります。前に述べたように、年長児や成人が百日咳にかかった場合には、咳が長く続くだけで重症化することはありません。そこで百日咳を疑わなければ正しい診断がつきません。その結果、周囲の新生児や乳児にうつしてしまう訳です。年長児や成人が百日咳にかかった場合には新生児や乳児などへの感染源になるので長期間の隔離が必要です。また潜伏期間中に抗生物質を服用して発病を予防することが大切です。成人でも百日咳にかかることを知っておきましょう。

2003年9月9日掲載

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