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医師・医療機関の皆さまへ
  水の都記念病院 中川建夫 先生

 

 症状によっては手術も
 【答え】肛門やその周囲に腫物ができたり、腫れたりする病気には次のようなものがあります。
 <1>内痔核(ないじかく)
 肛門の中にできる痔核(いぼ痔)です。大きくなると飛び出て、出血や痛みを伴うこともあります。8割以上の人が内痔核を持っていると言われており、症状が軽度であれば軟膏(なんこう)や座薬、内服薬で様子をみます。自然に肛門内に戻らない、もしくは出血がひどい場合は手術が必要です。手術は、切除する方法や注射で固めて縮小させる方法があります。
 <2>外痔核
 肛門の出口近くにできる痔核です。特に、急に出現して強い痛みを伴うものが血栓性(けっせんせい)外痔核です。内部に血の塊がたまり、普通は自然に消失します。場合によっては切開して血の塊を取り除きます。
 <3>肛門周囲膿瘍(のうよう)
 肛門周囲の感染症で、直腸と肛門の間にあるくぼみ「肛門小窩(しょうか)」から、ばい菌が入って化膿(かのう)した状態です。皮膚から浅いところに膿(うみ)がたまると、肛門周囲が腫れて痛みや発熱を伴います。化膿したところが自然に破れて膿が出ることもあります。そうでなければ切開して膿を出します。膿の道(トンネル状の管)ができてしまうと「痔瘻(じろう)」になり、手術する必要があります。
 <4>皮垂(ひすい)
 肛門の出口にできる皮膚のたるみです。これ自体には症状がないことが多く、便秘などの排便障害やいぼ痔、切れ痔、加齢に伴ってなることがあります。出産によってできる女性もいます。皮垂のみなら、特に治療の必要はありませんが、きれいに肛門がふけない、不快感が強い場合は切除します。
 <5>粉瘤(ふんりゅう)
 全身の皮膚のあらゆるところにできる腫物で、肛門周囲に生じることもあります。小さいうちはしこりとして触れるのみですが、大きくなると圧迫されて痛むこともあります。摘出すれば治ります。感染を伴うと腫れて痛み、破れると膿が出ます。この場合、痔瘻との区別が困難なこともあります。
 <6>脂肪腫
 脂肪細胞の増殖による良性腫瘍で、肛門周囲にできることもあります。大きくなって生活に支障が出るようなら摘出します。
 <7>尖圭(せんけい)コンジローマ
 ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染による皮膚腫瘍で、肛門周囲にも、できることがあります。パートナー間で感染します。悪性ではありませんが、放置すると増殖して巨大なカリフラワー状の腫瘍になることもあります。切除やレーザーで焼きつぶす焼灼(しょうしゃく)、軟膏などで治療します。
 肛門の腫物であれば飛び出た痔核や皮垂かもしれません。まれですが、肛門に悪性腫瘍ができることもあります。肛門から少し離れた腫物なら、粉瘤か脂肪腫、尖圭コンジローマの可能性があります。担当医師から詳しく説明してもらうか、肛門科の受診をお勧めします。

 

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