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 寒くなると猛威をふるう子どもの嘔吐・下痢症はウイルス性の感染性胃腸炎で、毎年繰り返されている。これ以外にも子どもはいろいろな原因で下痢をすることがあり、小児科を受診する子どもは発熱に次いで下痢が多い。そこで子どもが下痢をした場合の上手な受診の仕方と対処法について簡単にお話する。下痢の原因や治療を考える上で、便を見ることがまず大切なので、できれば受診の際には新しい便を持参して欲しい。また、食中毒は最近では夏に限らず、どの季節にもみられる。そのため発病数日以前からの食事内容をあらかじめメモしてもらえれば、大いに診療に役立つ。さらに海外旅行やペットからも感染する病気もあり、該当する人は忘れず話して欲しい。

 治療については、吐いたり、吐き気が続いている場合は点滴することになるが、症状が軽い間は水分を与えて欲しい。水分としては水やお茶よりは、塩分や糖分を摂る必要があるので、小児用スポーツドリンクが手軽でもあり、使ってみて良い。100%天然果汁や大人用のスポーツドリンクを乳幼児に与える場合は、さ湯で薄める位が良い。

 ミカンなど柑橘系ジュースは吐き気を催すこともあり、控えた方が良い。水分が摂れるようであれば次は食事を与えよう。先ず、野菜スープやみそ汁から始め、欲しがればおかゆ、うどん、パンなどのでんぷん性の食品を与えてみよう。さらに食欲がでてくれば、白身の魚やリンギ、バナナなどの果物もメニューに加える。下痢が完全に治るまでは、ゆっくり休ませてあげることが大切であり、集団生活や雑踏を避けることもお忘れなく。

 今年は新世紀のスタートの年である。20世紀は科学技術の時代とも言われ、医学の分野でも目覚ましい進歩がもたらされた。成果の一つに痘瘡の根絶がある。ご存じのようにイギリスの開業医エドワード・ジェンナーが子どもに牛痘苗を接種した1796年に痘瘡根絶への人類の挑戦が始まった。それから170年後の1967年にWHOは痘瘡根絶十年計画を策定し、計画どおりの1977年のソマリアでの一例を最後に、有史以来人類を苦しめてきた痘瘡は地球上からなくなり、1980年には根絶宣言がなされた。この輝かしい成果の後継事業として、1988年にWHOは2000年までに、ポリオ根絶を目標に掲げ行動に移した。そして2000年10月にはWHOは我が国が属している西太平洋地域でポリオが根絶されたことを認定した。これはアメリカ地域に継ぐ快挙であり、21世紀の早い時期に痘瘡に続き、地球規模での根絶宣言の朗報が聞かれると確信する。

 次に第三の根絶目標疾患として、安全で予防効果の高いワクチンが開発されているハシカが考えられている。アメリカではワクチンの再接種や接種率の向上対策が精力的にとられていて、ハシカの集団的発生はなくなり、患者数は激減している。一方、我が国のワクチン接種率は流行を完全に阻止できるレベルには達しておらず、毎年各地で小規模な流行が繰り返されている。又、発展途上国とりわけ紛争地域ではまだまだハシカが蔓延しており、多くの子ども達が犠牲になっている。しかし地球上から扮そうがなくなり、世界の軍事費の数パーセントの資金があれば、今世紀の遅くない時期に根絶出来るだろう。新世紀の医学の進歩が21世紀の主役である子ども達の健康で幸せな生活に貢献できることを期待したい。

 夏休みも終わりというのに、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が流行している。毎年の季節変動では、八月後半には落ち着く傾向にあるので、もう少しの間、感染に注意が必要である。

どんな症状で、注意点は?
 耳下腺部の痛みと腫れが約一週間続く。食事の際に痛みが強い場合は、柔らかい食事にして、すっぱい物は避けるのが良い。合併症の髄膜炎の時には、発熱に伴って頭痛と頻回の嘔吐がみられる。

二度目のおたふくかぜ?
 一度この病気にかかると、一生二度とはかからない(終生免疫)。ところが二度目のおたふくになったと訴えて来院する子がいる。この場合前回が反復性耳下腺炎やリンパ節炎であった事が考えられる。おたふくかぜの診断が難しいこともある。

いつまで休めばいい?
 登校停止期間は腫れが消失するまでとされ、この間約一週間だが、それ以上腫れが残ったり、まれに遅れて髄膜炎になることもある。

 ストーブの恋しい季節になると、子ども達にとってはヤケドが多くなる季節でもある。平成10年度の子どもの死因順位をみると、不慮の事故は0歳児では第4位一歳以降の小児期では第1位を占めている。我が国の乳幼児死亡率は、世界で最も低いにもかかわらず、事故による死亡率は先進国の中では決して低くない。年齢別の事故死因は0歳では窒息が全体の七割を占め、次いで溺死、交通事故、1~14歳では交通事故が最も多く、次が溺死でこの二つで事故死全体の7~8割に達している。

 小児の発達や行動パターンは、事故の種類や発生頻度と深くかかわっており、効率的な事故防止策をたてるうえでも、大切な要因である。そこで小児の事故の三大死因のそれぞれについて、年齢別の特徴と防止策について述べてみると、

1. 交通事故 : 0歳では乗用車乗員事故がほとんどで、正しいチャイルドシートの着用が求められる。幼児期では歩行者事故が多くなるので、保護者がしっかりと、手を握り歩道側を歩かせる、といった配慮が必要だ。学童期になると、自転車事故が多くなり、徹底した安全教育が大切だ。

2. 溺死事故 : 乳幼児期では浴室内での事故が多く、事故防止策としては子どもだけで入浴させたり風呂場で遊ばせない浴室の入り口に鍵をかける。また浴槽の蓋は堅く丈夫なものにする使用後浴槽の水は流しておくといったことも大切である。最近ジェットバスに女児の頭髪が巻き込まれ、溺死したとの報道があり、これも注意が必要だ。幼児期以降では川、海、プールでの事故が多くなり、シーズン前には年齢別の安全教育が必要だ。

3. 窒息事故 : 乳児期前半ではベットでの事故が多く、うつぶせ寝、添い寝に注意し、、ぬいぐるみやタオルをベット内に置くことを止め、、適度な堅さの布団を使って欲しい。乳児期後半から幼児期前半にかけては気道異物による窒息が増えてくる。異物としては豆類、特にピーナッツによる事故が多く、この年代の子どもに食べさせたり、手の届くところに置かないのが良い。

 毎年冬になると、インフルエンザが流行してる。ことにインフルエンザの経過中に脳炎・脳症を発病することがあり、しかも子どもが罹ることが多く、死亡率の高い怖い病気である。 徳島県小児科医会では3年前より毎年、県内の小児インフルエンザ脳炎・脳症の発生状況の調査をおこなっており、3年間で乳児2名、幼児8名、学童5名計15名の患者が確認されている。このうち9名は回復したが、3名が死亡し、3名は後遺症を残している。

 厚生省の全国調査でも217名の患者が集計され、うち58名が死亡、56名に後遺症を認めている。この病気のもう一つの特徴はインフルエンザ発病後、脳炎・脳症の症状が現れるまでの期間が大変短いことで、15名中14名までが2日以内であった。また、インフルエンザワクチンの接種歴の調査では県内の15名、全国調査の217名の全員が接種していなかった。

 インフルエンザ脳炎・脳症の有効な治療法は現状ではかならずしも確立されているとはいえない。そこで、インフルエンザに罹りにくくすること、罹っても脳炎・脳症にならないようにすることが大切だ。このところインフルエンザワクチンを接種する人が激減していることもあり、最終的な結論は出ていないが、ワクチンを接種することが予防効果を高める最も有効な手段であると考えられている。13歳以下の小児は1~4週間の間隔で2回接種する必要があり、インフルエンザが流行し始まる12月中旬までに接種を完了しておくことが良いでしょう。

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