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県民の皆さまへ

 生活リズムが環境の時間とずれてくると体調に変化を来すことがあることを先週お話ししました。今週はもう少し詳しくお話ししたいと思います。

体内のリズムと環境サイクルの間には一定の関係があります。規則的な生活の中では決まった時間に体内で一定の現象が起こっています。つまり多くの人は夜間に睡眠を取り、昼間に活動しますから、体温は睡眠時に低く、早朝覚醒の直前に最も低くなります。覚醒後は身体活動とともに体温が上昇し、夕方に最高になります。その後、休息・入眠にともない体温は低下するわけです。また脳下垂体・副腎皮質系の代表的なホルモンであるACTH、コーチゾルは覚醒時から活発に分泌され、睡眠とともに分泌は抑制されます。成長ホルモンは反対に入眠直後の深い睡眠で分泌が増加します。睡眠・覚醒の変化、体温の変動、内分泌系の変動はそれぞれが独自の体内時計で動いていて、規則的な生活の中では一定の位置関係で変動しています。従って睡眠のリズムが環境のサイクルと解離した場合には、体温や内分泌のリズムが睡眠のリズムと位相差を生じることになり、体調の異常を訴えることになるわけです。体温が高くなる時間に眠ろうとしても寝つきが悪くなり不眠を訴えます。体温の低い時間に活動しても仕事や学業の能率はあがりません。副腎系のホルモンが十分に分泌されていなければ活発な運動は出来ません。十分な睡眠が取れなければ成長ホルモンの分泌が悪くなって子どもの成長は阻害されます。

 体内の時計は中枢神経にあり、感覚器を通して入った光・音などの刺激を取り込み、それを体内の神経を介して内臓や運動器官に働きかけ、身体の生理機能が一定のリズムで働くように作用します。感覚器や脳内の認知機能に障害があると環境の時間を正しく認識することが出来ず、生理機能をリズム的に維持することが困難になります。毎日、規則正しい生活を営み、生体リズムを維持継続することは身体にとって一番健康的な生活を続けることになるのです。

2003年7月15日掲載

 毎日の規則正しい生活は子どもの健康にはとても大切なことです。決まった時間に起きて、規則正しい食事を摂って、十分に活動した後は早めにぐっすりと眠りたいものです。最近はコンピューターの発達などで社会全体が昼夜の別なく24時間活動しており、子どもの生活も大人の習慣に引きずられるような形で夜更かしが増加しています。今回は子どもの発達にとって規則正しい生活がいかに大切か、その基本になる睡眠のリズムを中心にお話ししたいと思います。

 生活のリズムが少々乱れても、ほとんどの人は毎日ほぼ決まった時間に起きることが出来ます。これは身体の中にあって、時を刻み続ける生体時計の働きによるものです。この生体時計は生まれながら自動的に振動して、環境の時間には関係なくリズムを刻み続けます。しかし体内の時計は1日約25時間の周期で振動していますから、外の世界とは常に時間合わせをしていなければ毎日約1時間ずつ社会の時間とずれてしまいます。ここで大切なのは毎日の時計合わせです。一般に多くの生物で、時間の手掛かりになるのは明暗の変化など物理的な刺激ですが、人の場合には食事や会話、接触など社会的な人と人の交わりが時間の手掛かりになります。日の出にともなう明暗の変化よりも、夜明けにともなって人が起き出す気配や活動開始に伴う動きなどのほうが大きな手掛かりとなるわけです。家族の生活が夜型であれば、子どもの生活も夜型に傾きます。反対に受験勉強などで子どもが夜遅くまで起きていると、家族の生活も夜更かしになってしまいます。

 現在の社会では深夜勤務や交代制勤務などで、睡眠リズムに変調を来たすことが多くなっています。睡眠以外の様々な生理現象、例えば体温や呼吸・循環、消化・吸収、内分泌などはそれぞれリズムが一定の位相で変化していますから、睡眠リズムが環境の時間と解離してしまうと、それぞれの生理現象のリズムが体内で解離してしまいます。体内での規則的な生理現象の維持が困難になってしまうと、体調の異常となることがあります。睡眠をはじめ、規則的な生活は健康維持の基本と考えられます。

2003年7月8日掲載

 ウイルス性胃腸炎は嘔吐下痢症とも言われ細菌性胃腸炎とともに感染性胃腸炎の中では重要なものです。原因ウイルスにはロタウイルス、ノーウォークウイルス、サッポロウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスの5種類が知られています。

 口から侵入したウイルスが十二指腸から小腸の腸管上皮に感染し発病し、嘔吐・下痢・腹痛・発熱などの症状をひき起こすと考えられます。これらのウイルスは発病後1週間くらい糞便中に排出されて感染源になり人から人へ伝染します。食品についたウイルスによって食中毒の形をとることもあります。各ウイルスはそれぞれ臨床的な特徴を持っていますが、最も重症な症状を示すのはロタウイルスです。

 潜伏期間は48~72時間で急激な嘔吐と発熱で発病します。2日目以降、嘔吐は少なくなり下痢が始まります。下痢に血便はなく水様便から軟便までさまざまで色調も白色、黄白色、緑白色、茶褐色までさまざまです。ロタウイルスによるものは水様便、白色便が典型的で下痢回数も多く脱水など重症化する傾向があります。ノーウォークウイルスでは発熱より嘔吐が多くロタよりも軽くなります。食品について食中毒を起こすことが多く集団発生しやすいのはこのウイルスです。サッポロウイルスやアデノウイルスは発熱の頻度は低く下痢と嘔吐のみ、または下痢だけの場合が多いと言われます。

 この疾患は周囲の流行を参考にして、血便のない下痢で発熱や嘔吐を伴う場合に診断します。嘔吐や発熱だけの時期には髄膜炎や、頭部外傷による嘔吐を鑑別する必要があります。ロタやアデノウイルスでは迅速診断が可能で鑑別に役立ちます。他のウイルス性では嘔吐や発熱は比較的軽く全身状態は良好に保たれます。

 嘔吐下痢症の初期には嘔吐に対する処置が大切です。固形物や乳製品は嘔吐しやすいので初期には禁止しますが、嘔吐や発熱によって失われる水分と電解質を適切に補給することが大切です。

2003年6月25日掲載

 感染性胃腸炎の中で細菌が原因のものを細菌性胃腸炎と呼びます。原因細菌にはカンピロバクター、サルモネラ、病原大腸菌、腸炎ビブリオなどが知られています。この中で最も多く見られるのはカンピロバクターです。今回の細菌性胃腸炎の代表的な疾患であるカンピロバクター腸炎についてお話ししたいと思います。

 細菌性腸炎の中で10~20%がこの細菌によるものとされます。カンピロバクターはニワトリ、牛、豚、羊など多くの家畜や犬、猫などペットの腸管に生息し、これらの糞便で汚染された食肉や水で感染します。とくにニワトリの保菌率は50~80%であり、鶏肉の内臓や皮膚は市販のものでもこの細菌で高度に汚染されており、鶏肉は重要な感染源であるとされます。またキャンプ場の飲料水や井戸水、簡易水道の水などが汚染されて感染源になる場合には集団食中毒になることもあります。ペットに接触することでも感染するとされます。

 潜伏期間は1~7日(平均2~3日)で比較的長く、症状は発熱、下痢、腹痛、悪心、嘔吐で急性胃腸炎の症状です。中でも下痢はほぼ全例に認められ90%は水様下痢、約40%が血便を示します。発熱、腹痛は90%に見られます。この疾患は一般に自然治癒の傾向が強く、腹痛や脱水に対する対症療法を行っていれば数日で改善します。しかし症状改善後にも糞便中に2~3週間排菌が続くと言われ、体力や抵抗力のない乳幼児や基礎疾患を待つ人に対しては再発の危険性、集団内での二次感染の可能性、髄膜炎や箘血症など重症化予防のために抗菌薬を投与します。この細菌は一般に人から人への接触で感染することはまれで、患者の排泄物の分別処理が徹底されていれば厳重な隔離は必要ありません。

 この疾患の予防には生肉の調理に注意することが大切です。生肉を触った手で食器や野菜を触らない。肉は十分に火を通すなど生肉にはこの細菌がついているものとして取り扱うことが大切です。

2003年6月17日掲載

 細菌やウイルスが原因の急性胃腸炎を感染性胃腸炎と言います。この中には食べ物や水を介して発病する食中毒の形をとるものや感冒のように人から人へ流行が見られるものがあります。急性胃腸炎の一般的な症状は発熱、下痢、嘔吐、腹痛などです。乳幼児では嘔吐や食欲低下と激しい下痢のために栄養障害や脱水症を起こすことがあり、栄養状態や衛生状態の悪い開発途上国では現在でも死亡原因の上位に位置付けられる重要な疾患です。

 急性胃腸炎の原因を下痢や発熱のなどの臨床症状だけで細菌性とウイルス性に鑑別することは容易ではありません。原因を特定するためには大便を直接観察して、腐敗臭や粘液、膿、血液などを認めれば、細菌検査を行います。発病前に食べたものの中に生もの、調理が不十分なもの、保存に問題のあるものがなかったか、同じものを食べた人に同様症状の人がいないか、家族や周囲に胃腸炎が流行していないかなどを確認することが大切です。ウイルスの中ではロタウイルスとアデノウイルスは迅速検査が可能です。原因を確定するのは、その原因によって対処の仕方が変わるためです。例えば細菌性胃腸炎の場合、下痢止めはもちろん、抗生剤の使用が有害に作用することもあるからです。また原因によっては伝染病としての取り扱いが必要な場合もあります。

 従来、食中毒の原因と言えば腸炎ビブリオ、サルモネラ、ブドウ球菌が代表的なものでしたが最近の食中毒の原因で多いものはカンピロバクター、サルモネラ、大腸菌です。またウイルスが原因の食中毒は小型球形ウイルス(SRSV)によるものが多く報告されています。とくに大腸菌は1996年に腸管出血性大腸菌の集団発生がみられてから、毎年全国で散発的な発生が見られています。従来、6月はビブリオによる食中毒の多い時期です。これからは冷たいものを食べる機会が増えたり寝冷えをすることが多くなり、消化・吸収力が低下します。食物、水、手指などを清潔に保ち身体を冷やさないように注意しましょう。

2003年6月10日掲載

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