徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

 最近、徳島市内で麻疹の流行が見られます。今年も2月から3月に徳島の各地で麻疹が発生して、ある病院では常に数名の麻疹患者が入院していてベッドの確保に苦労しています。麻疹の伝染力は大変強いので入院する場合でも一般の乳幼児とは隔離する必要があります。麻疹にかかる小児の大部分は麻疹ワクチンを受けていない乳幼児です。近年、日本各地で麻疹の流行が見られ、今年は徳島でも発生が見られています。麻疹は伝染力や症状が強いことが特徴で、普通の麻疹でも1週間くらい発熱が続くので体力・抵抗力のない乳幼児が麻疹にかかると普通の麻疹でも脱水症を起こすことがあり、合併症が無くても入院することは珍しくありません。さらに肺炎などの合併症を起こせば命を落とす子どももいます。このように麻疹はかかると大変な病気でありながら、最近は麻疹を経験した人が少なく、その恐さを知らない人が増えています。

 麻疹の症状は初め発熱や咳、鼻汁、眼脂、下痢などの風邪症状ですがひとつひとつの症状はかなり激しいものです。病初期には分泌物が多くカタル症状と呼ばれますが、この時期が最も伝染力が強く免疫のない乳幼児が接触すると100%感染して発病します。発熱後3日くらいでコプリック斑と呼ばれる発疹が口腔粘膜に出現して、麻疹の診断がつきます。発疹はこの後に出現します。発疹は頚部から始まり次第に顔や全身に広がります。発疹が出現してから3~4日は発熱が続きます。高熱が1週間ほど続き咳も激しいのでこの間に食事が取れなく脱水症を起こすことがあります。麻疹が恐いのはその症状が強いからだけではなく、抵抗力が低下するからです。肺炎球菌やブドウ球菌など細菌に対する抵抗力が低下するとあらゆる感染症は重症化します。気管支炎、肺炎、中耳炎なども多く見られます。

 ワクチンのおかげで最近あまり麻疹を見なくなりましたが、かかると大変恐い病気です。1歳を過ぎれば出来るだけ早い時期に麻疹ワクチンを受けて絶対に麻疹にかからないようにしましょう。

2003年4月8日掲載

 川崎病は高熱を主症状とする炎症性疾患です。その本態は血管炎ですから、検査所見も炎症所見が見られるだけで、感染症など他の疾患による炎症と本症を区別できるものはありません。しかし心エコー上での心血管系の変化は診断に重要であり、特に冠動脈瘤などは後遺症の有無にも影響があり大切な所見です。急性期に見られる冠動脈の拡大や冠動脈瘤などの変化と、血流に影響を及ぼす血液中の血小板の数は重要な検査所見と考えられます。川崎病の急性期に見られる冠動脈の変化は1~2週間で出現し、1~2カ月以内に多くは正常化しますが、5~6%は6カ月以上異常が残ることがあります。

 川崎病の治療はこれまでに様々な治療が試みられてきました。急性期における治療の目的はこの炎症を抑制することで発熱などの苦痛を速やかに取り去るとともに冠動脈の炎症を出来るだけ軽くし、また血栓形成を抑制して冠動脈病変を予防することです。

 治療の代表はアスピリン療法と免疫グロブリン療法です。アスピリンは炎症性疾患の代表的な治療法であると同時に、血小板機能を抑制して血栓形成を予防します。免疫グロブリンはその大量療法が行われるようになって、治療性成績が向上したと言われていますが、なお本症の致命率が0.3~0.5%あるとされ重症の川崎病に対する治療には大きな問題が残っています。

 治療効果の目安は解熱と検査上の炎症所見の改善です。早期に治療に反応して解熱し、急性炎症所見が正常化すれば急性期を脱したと判断し退院します。しかし川崎病は冠動脈の拡大や冠動脈瘤などの後遺症を残すことがあるので、退院後の経過観察が大切です。高度の冠動脈の拡大が起こると、回復期以後に血管狭窄や血栓形成を起こしやすくなり、心筋梗塞を起こすことや突然死の危険性が増加します。従って川崎病にかかった人は急性期を過ぎても、大きくなるまで心エコーや心電図検査などを定期的に受ける必要があります。

2003年3月25日掲載

 川崎病の発生が確認されて約40年になり、過去に川崎病になった人が15万人、20歳以上になった人が5万人居ると言われています。しかし未だに川崎病の原因は不明です。その本態は全身の血管炎であると考えられています。急性期は1カ月位で治ってしまいますが、血管炎による心臓の後遺症として冠動脈瘤が残ることや、将来に動脈硬化を来たす可能性があることから生活習慣病の原因として重要視されています。

 川崎病は小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群とも呼ばれ、主要症状6つのうち5つ以上の主要症状が見られる場合は本症の診断が確定されます。

1. 5日以上続く発熱。一般に発熱は39度以上の高熱を示しますが、他の症状から本症が疑われると3~4日目に治療が行われるため、5日未満で解熱した場合でも川崎病と診断されます。

2. 両側眼球結膜の充血。血管炎に伴う充血で1本1本の毛細血管が明瞭に認められ、眼脂がほとんどなく麻疹やプール熱とは区別できます。

3. 口唇、口腔所見。口唇の紅潮や乾燥、亀裂を認め出血することもあります。咽頭粘膜も発赤しいちご舌もみられるため溶連菌感染症との区別が問題になります。

4. 不定形発疹。様々な発疹が見られますが水痘や痂皮を形成することはありません。

5. 四肢末端の変化。手掌や足底の紅斑と手足の硬性浮腫が特徴とされます。回復期には指先から落屑が見られますが、これが川崎病診断の決め手になることがあります。

6. 頚部リンパ節腫脹。急性期に見られるリンパ節腫脹は他の主要症状に比べると発生頻度は低いとされます。

 診断基準の主要症状には入っていませんが、BCG接種部位が発赤して痂皮形成するなどの変化が多く見られるのも特徴です。その他に下痢・嘔吐・腹痛・腸閉塞や黄疸などの消化器症状、関節痛や関節腫脹なども多く見られます。

 川崎病は全身の臓器に様々な症状を示す可能性があり、早期に適切な診断を下して治療を行うことが大切です。

2003年3月18日掲載

 川崎病は急性期に発熱や発疹を示すことが特徴の急性熱性疹患ですが、後に心臓の後遺症として冠動脈瘤を残すことがあるので、注意しなくてはなりません。この疾患は東洋人とくに日本人に多いとされますが原因は不明です。この疾患が1968年に報告されてから患者数は毎年増加し、1年間に約6,000~8,000人が発病していると言われます。川崎病は全身の血管炎が特徴で、あらゆる臓器に症状が出現する可能性があります。治療を受けずに放置すると4人に1人は冠動脈瘤を合併すると言われます。

 原因についてはこれまでに様々な因子が推測されましたが、確定されたものはありません。川崎病は地域的に流行が見られることや季節性があることなどから溶連菌、ブドウ球菌、エルニシアなど細菌感染、アデノ・単純ヘルペス・ロタ・EB・RSなどのウイルス感染、その他リケッチア、カンジダ、マイコプラズマなどの感染症が疑われましたが、現在までのところ原因微生物は特定されていません。またこの疾患が発生した時代背景によって水銀や合成洗剤が原因として疑われた時もありましたがはっきりとした原因物質も特定されていません。

 2000年の全国調査では年間8,267人の患者が発生しています。発生は乳幼児によく見られ4歳以下が80~85%、男子に1.3~1.5倍多く、同胞発生が1~2%、再発例は2~3%、後遺症として心障害を残したものが5~6%あるとされます。

 川崎病の診断基準は次の6項目です。

1. 5日以上続く発熱、
2. 両側眼球網膜の充血、
3. 口唇口腔所見、
4. 不定形発疹、
5. 四肢末端の変化、
6. 非化膿性頚部リンパ節腫脹

の6項目です。このうち5項目あれば本症であるとされます。また診断基準を満たさなくても冠動脈瘤を持つものは本症が疑われるとされます。

 川崎病の原因は明らかではありませんが、心臓の後遺症を残す可能性がある疾患ですから、早期の正確な診断が求められます。

2003年3月11日掲載

 単純性熱性けいれんは自然に止まり、その回数は1回か2回ですから予防を考える必要はありません。ただ初めて熱性けいれんを起こした場合に2回目の発作が起こるのかどうかの判断は困難です。熱が出る度に不安になると思いますが、2回目の発作を起こせば3回目を起こす確立が高くなり、それ以降の発作予防が必要になると考えられます。

 発作の予防には抗けいれん剤ジアゼパム座剤を使用します。一般に解熱剤では熱性けいれんの予防はできないとされます。いたずらにけいれんが恐いと言って解熱剤を使用するのは発熱を来たす感染症の治癒を遅らせることになりかねません。けいれんの予防薬は複雑性熱性けいれんと診断された人、即ち熱が出ると必ずひきつける人やひきつけが始まるとなかなか止まらない人に予防のために使用する薬です。しかし熱性けいれんを予防することは、必ずしもてんかんの発症を予防することにはならないとされています。熱性けいれんに対する予防処置は1~2年間で終わることが多いのです。

 けいれん発作に対しては、まず安静にして二次的な事故が起こらないように注意します。転落や打撲による外傷、嘔吐、誤嚥などによる窒息が起こらないように安全な場所に静かに寝かせます。嘔吐・窒息など顔色がよく判るように上向きに寝かせて呼吸が楽に出来るように衣服はゆるめておきます。口に物を詰めると歯や歯肉を傷つけることや、窒息を見逃す原因になり危険です。

 けいれん発作の時にはあわててしまって大切なけいれんの特徴を見逃していることがあります。とくに持続時間や発作型については簡単にメモをとっておきましょう。熱性けいれんと判って、発作が止まっていれば必ずしも病院で受診する必要はありませんが、初めてのけいれんの場合にはけいれんが治まってから原因となる疾患がないか確認のために受診しましょう。

2003年2月25日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.