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県民の皆さまへ

 呼吸をする度にヒューヒューとかゼーゼーとか苦しそうな音が聞こえ、痰が切れにくいとか、激しく咳き込むなどの症状が発作的に起こる人がいます。こういう症状が見られる時には喘息が疑われます。喘息はアレルギー体質のある人に起こりやすく、季節の変わり目や風邪をひいた時に起こることが多いと言われます。ひいた風邪がなかなか治らない場合や、季節の変わり目に毎年同じような症状が出てくる時には喘息に注意しなくてはなりません。

 喘息発作の主症状は呼吸困難で、非常に苦しいものです。呼吸困難のために学校生活や運動など、日常活動も障害されるようになります。喘息発作は軽い場合には喘鳴や軽い陥没呼吸だけの時もありますが、中等度以上の発作になりますと呼吸困難を訴えてきます。そのため昼間の活動ばかりでなく、睡眠にも影響が現れます。喘息の発作は夜間や明け方に起こることが多いので、睡眠が十分に取れなくなります。睡眠中の姿勢によっても呼吸困難がひどくなり、身体を横にすると苦しく、膝を抱えて座ったままの状態で、一睡も出来なくなることもあります。発作が重くなると著しい呼吸困難からチアノーゼを呈し、さらに重くなると低酸素状態から生命の危険を感じることもあります。

 小児の喘息はアトピー性皮膚炎などのアレルギー体質を持つ子どもが、呼吸器系の感染症や刺激の強い化学物質の吸引によって、気管支粘膜の障害を受け、防御機構の破錠からアレルゲンが生体内に侵入しやすくなり、その結果として喘息を発症するに至ります。特に小児では呼吸器系の感染症を繰り返すことによって、徐々に喘息発作が明らかになっていきます。

 以前は、小児の喘息は大人になれば治ってしまうと考えられていましたが、これは小児が大きくなるに従って感染症にかかり難くなるためで、不十分な治療のままに喘息を放置すれば、小児の喘息も大人まで持ち越してしまうことになります。重い発作を起こした人はもちろんですが、軽い発作でも繰り返している場合には、治療を継続する必要があります。

2002年11月12日掲載

 卵や魚など特定の食物を食べた時に蕁麻疹が出たり気分が悪くなったりすることがあります。このように食物で様々な症状が出ることを食物アレルギーと言います。食物アレルギーといえばアトピー性皮膚炎を一番に思い浮かべるかも知れませんが、消化器や呼吸器など全身に症状が出るのが特徴です。アトピー性皮膚炎は食物アレルギーのひとつの症状に過ぎません。

 食物アレルギーには食物を食べてから症状出現までが1時間以内と短い即時型の反応と、それ以上の遅延型反応に分かれます。食物アレルギーの中で最も重篤な反応を示すのはアナフィラキシーショックと呼ばれる全身症状で、食物を摂取して短時間で口内掻痒感や血圧低下などを来たします。呼吸器症状としては鼻汁や咳とともに喘鳴が出現して呼吸困難が起こります。消化器症状としては嘔吐や腹痛などの胃腸症状上が多く、ひどくなると血便が出ることもあります。皮膚症状としては湿疹、蕁麻疹、皮膚掻痒などが出てアトピー性皮膚炎も発赤、掻痒が増強することがあります。アナフィラキシーショックの症状が出現した場合には速やかに診断して、適切な治療をしなければ命に関わることがあります。

 食物アレルギーの原因食物を特定するのはなかなか大変です。特にアトピー性皮膚炎の原因として卵白、牛乳、大豆などがよく知られていますが、血液検査で陽性に出ても症状が出ない場合や、反対に検査で陰性でも食べると症状が出る場合があります。正確な原因診断には血液検査だけでは不十分で、アトピー性皮膚炎に対して安易な食物除去は、成長に必要な栄養素の不足などの結果、成長障害を来たすことがあり危険です。除去食を行う場合には、その食物を除去するだけでなく、除去した食品の代替食にはどのような食品があるのか、アレルギーの専門医や栄養士から指導を受ける必要があります。上手に除去食を行い快適な生活を送るようにしましょう。

2002年10月22日掲載

 「こどもの健康週間」は平成2年10月から日本小児科学会が設置して、全国各地で各種の講演会やシンポジウムなど様々な行事が行われています。徳島でも毎年、様々な行事が行われてきましたが、今年も10月20日(日)に「こどもの健康週間」行事を開催すべく準備をすすめてきました。今年の行事のテーマは「はしかをなくそう・徳島」です。

 はしかは接触すればほぼ100%感染するほど伝染力が強く、症状も高熱や激しい咳が持続し、肺炎などの合併症も多く、死亡率が高い疾患です。はしかはワクチンの普及で随分減少しています。時にはしかの流行が見られることがあります。ワクチンで免疫をつけた世代が増えてきますと、はしかに対する免疫が想像以上に低下している可能性があります。ワクチンで免疫をつけた人から生まれた新生児がはしかに対する免疫を持っているのか、抗体検査の結果を中心にお話しをする予定にしております。その他にも小児科医や保健士が相談に応じるコーナーや遊びのコーナーも準備しています。

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『こどもの健康週間行事』
日  時:10月20日(日)午後1時~3時
場  所:ふれあい健康館2階 母子保健センター
     徳島市沖浜東2丁目 
テ ー マ:はしかをなくそう・徳島
行事内容:○はしかとワクチン
       ○子育て井戸端会議
       ○ビデオやこどもの事故防止コーナー
       ○あそび広場

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2002年10月15日掲載

 最近、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患が増えているという話をよく耳にします。アレルギー疾患は遺伝的な体質を基礎とする疾患ですが、時代とともにその発病の様相が変わってきています。代表的な疾患であるアトピー性皮膚炎についても以前は子どもの病気とされていましたが、最近では成人のアトピー性皮膚炎が問題になっています。またアレルギー性鼻炎も昔は子どもにはないと言われた時代がありましたが、最近ではその発病の低年齢化が指摘されています。

 アトピーと言うとアトピー性皮膚炎のことだと思われがちですが、元々アトピーはその体質を示す言葉で、アトピー性皮膚炎以外の喘息や鼻炎もアトピー体質と言われる遺伝的な体質を元に発病する疾患です。小児の体質は生まれる前から胎内で様々な影響を受けると言われます。例えば、母親が妊娠中に食べた食物や環境の化学物質の影響を受けています。もちろん出生後に子どもが口にする食物や環境の影響を受けることは当然です。

 喘息や鼻炎などのアレルギー疾患がアトピー体質を基に発病する疾患であることから、アトピー性皮膚炎と喘息や鼻炎にはお互いに密接な関係を有することが理解できます。乳児期にアトピー性皮膚炎だった子どもが、成長するにつれて喘息や鼻炎を発病することがあります。多くの子どものアレルギー疾患は食物アレルギーや乳児湿疹、アトピー性皮膚炎で始まり、その後の環境からの物理的、化学的または生物的刺激を受けて、喘息や鼻炎を発病してきます。このようなアレルギー疾患が次々に変化しながら出現していくことをアレルギーマーチと言います。アレルギー疾患が年齢の経過とともに変化することを川の流れに例えて、上流にアトピー性皮膚炎を、その下流に喘息や鼻炎を置いて疾患の流れを理解します。喘息とアトピーが同時に見られることもありますが、喘息が出てくる頃にアトピーが良くなることもあります。両親や兄弟にアトピー素因のある人がアトピー性皮膚炎になった場合には、その後のアレルギー疾患の発生に注意する必要があります。

2002年10月8日掲載

 今月は子どもの薬についてお話ししてまいりました。一般に薬は病気に対して有効な作用を持っていると同時に、どうしても避けられない副作用のために毒にもなります。とくに大人が使っても問題のない薬でも、発達途中の子どもにとっては使うことが出来ないものがあります。

 例えば、解熱剤では大人ではよく使用する解熱剤が子どもではほとんど使えません。それは大人では解熱剤が炎症を抑える働きをするのに、小児では有害な作用として働いてしまうことがあるためです。例えば、アスピリンがライ症候群の発生に関与したことや、インフルエンザの時に使用した解熱剤のせいで脳炎・脳症で死亡する頻度や後遺症の確立が高くなることが知られています。小児科領域で唯一使用が認められている解熱剤はアセトアミノフェンです。最近、解熱剤の使用にあたってはとても慎重になっています。

 発熱は生体の免疫機能が刺激されて免疫力が高められ、自然の治癒力を引き出すように働き、これを無視していたずらに解熱剤を使用すると感染症に対する抵抗力が弱くなって、治癒が遅れるとされます。しかし発熱による食欲の低下や不機嫌などによる睡眠不足などで体力の低下を来たせば、疾患の治癒にとって不利に働き、このような時には解熱剤の使用を躊躇すべきではありません。ただ体温を下げることだけが解熱剤の目的ではなく、一時的に体温が下がって機嫌が良くなる、食欲が出る、睡眠がとれるなどの目的を持って、節度を守った使い方をすれば、むしろ解熱剤の効果は有難いものです。

 本来、薬は苦痛を取り除くために使用するのですが、副作用をいたずらに恐れて適切な量や期間を使用しなかった場合には十分な効果を望むことは出来ません。薬の正しい使用で十分な効果が出れば有難いものです。飲まない薬は効きません。抗生物質にしろステロイドホルモンにしろ、薬が無かった時代には苦痛は耐えるしか仕方がなかったものです。いたずらに副作用を恐れることで薬の持つ有難さを忘れてはなりません。

2002年9月24日掲載

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