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 川崎病は高熱と発疹やリンパ節腫脹などを特徴とする子どもの病気ですが、未だにその原因は分かっていません。最近、その発生数が増加する傾向にあります。今月は川崎病についてお話します。

 川崎病が最初に報告されたのは1967年です。始めは後遺症なく治る病気と考えられていましたが、多くの症例が報告されるうちに心血管系に障害を残すものがあることがわかってきました。

 本症の多くは乳幼児に発生し、男子に多く、また日本人など東洋人に多く見られます。発生が多いのは1月で10月には少ないとされます。兄弟での発生例や再発例なども報告されます。

 原因は明らかではありませんが、これまでに水銀説、合成洗剤説、感染説など多くの仮説がありました。遺伝的な素因も疑われますが、明らかな原因は特定されていません。

 川崎病は年間約1万人程度発生しています。その頻度は少しずつ増加して、発生年齢も若年化しています。これまで川崎病にかかった人は約25万人に上ります。冠動脈瘤などの後遺症は成長後も問題になります。

徳島新聞2009年7月8日掲載

 暑い夏には子どもは簡単に熱中症になります。とくに乳幼児の事故として熱中症が発生することがあります。熱い夏には熱中症がいつ発生してもおかしくはないことを頭において予防に努めることが大切です。

 熱中症の中でもっとも重いのが熱射病です。熱射病では大量の発汗による著しい脱水症が起こります。さらにからだに加わった高熱の負担が、熱を発散して体温を調節する機能を上回ると体温が異常に上昇し、これが体温調節中枢を障害します。

 組織内の異常な高温、脱水症、尿量の減少、循環血液量の減少、組織酸素消費量の増加、代謝異常などの病状が急速に進行することによって中枢神経、血液、肝臓、腎臓など多くの臓器が障害を受けます。

 熱射病の症状としては40度以上の高熱、発汗の停止、中枢神経症状の3つが特徴です。

 中枢神経症状としてはけいれんや意識障害が見られ、生命の危険はもちろん、中枢神経系の後遺症を残すこともあります。

 熱中症の発生を予防するには高温環境を避けることが大切です。乳幼児は高温環境では短時間でも簡単に熱中症を起こすことがあります。とくに炎天下の車の中は思わぬ高温になっていることがあります。子どもだけを車の中に残して大人が車を離れることは大変危険なことになります。

 熱中症の初期には大量の発汗が見られます。汗には水分だけでなく電解質も含まれますから、大量の発汗による熱中症の予防には水分とともに電解質を補給することが大切です。水分だけを大量に与えると電解質不足による低張性脱水となることがあります。

 発汗して体温調節することは大切な生理機能です。体温調節機能は乳児期に暑いときに汗をかいて体温を下げることを経験して発達します。熱中症を恐れるあまりエアコンの効いた涼しい環境ばかりで育てられた子どもたちは体温調節機能の発達が未熟です。必要以上に過保護にならないようにしたいものです。

徳島新聞2009年6月24日掲載

 小児は体温調節機能が未熟な上に、体水分の出入りも激しく、高温環境下では簡単に熱中症になることがあります。

 熱中症はその重症度によって、もっとも軽い熱けいれんや熱失神、中等症の熱疲労、もっとも重症の熱射病に分類されます。

 子どもの置かれた状態から熱中症を疑うことはそれ程難しいことではありませんが、その初期には同じような症状ですから重症度を正確に区別できないこともあります。熱中症を見た場合にその重症度を的確に判断することが難しければ厳重な経過観察が必要です。

 熱けいれんはもっとも軽症で、高温環境下で長時間の運動によって起こる短時間の痛みをともなうけいれんです。多くはふくらはぎに起こり、こむら返りと言われるものです。軽い体温の上昇を認めることはありますが、意識障害など中枢神経症状が見られることはありません。

 熱失神は日射病とも言われ、めまいや一時的な失神が見られ、顔面蒼白、脈は速くて弱く、呼吸数は増加し、口唇のしびれなどを訴えます。これは長時間、直射日光に暴露されることによって皮膚の血管が拡張して血圧が低下することによって脳血流が減少し、起立性低血圧と同様の症状が発生するものです。

 熱疲労は中等症です。高温多湿の環境下で激しい労働や運動をすると大量の発汗による脱水と、温熱による皮膚血管の拡張と運動にともなう筋肉への血流の増加による循環血液量の減少が加わって循環不全を起こします。

 熱疲労では大量の発汗があり、皮膚は蒼白で冷たく湿っています。脱力、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、筋肉痛を訴えます。脈拍は速くて弱く、呼吸は速くて浅くなります。

 熱疲労は治療に反応しやすく改善しやすいものですが、治療の遅れで熱射病に移行することがありますから厳重な経過観察が必要です。

徳島新聞2009年6月17日掲載

 暑くなると子どもが車の中に閉じ込められて熱中症を起こす事故が見られるようになります。子どもはからだが小さいために日本の夏のように熱くて湿度の高い環境では簡単に熱中症を起こすことがあります。今月は熱射病・熱中症について考えてみました。

 大人で熱中症と言えば高温多湿の環境で発生する労働災害を思わせますが、子どもでは真夏の学校でのスポーツや、炎天下の駐車場で車に閉じ込められた乳幼児の事故などで経験することがあります。これらの事故は適切な対応で予防可能なものです。

 熱中症が起こるのは高温環境下での体温調節がうまくできないためです。人間のからだは体温が上昇しすぎると発汗してその水分が蒸発するときに体表面の温度を下げます。このような発汗による体温調節機能がうまく働かないときに体内の生理機能に異常が発生します。これが熱中症と呼ばれるものです。

 熱中症は重症度によっていくつかのタイプに分類されます。軽症には熱けいれんと熱失神、中等症には熱疲労があり、もっとも重症なものが熱射病です。

 もっとも重い熱射病になると、体温調節機能が破綻しますから自分の体温を適切に調節することができなくなります。40度以上の異常な高体温や、循環不全が重なることによって全身の臓器障害が発生します。

 重症の熱中症では適切な病型を判断して早期に治療がなされなければ生命に危険がおよぶ可能性が高くなります。

 小児が熱中症になりやすいのは成人に比べて新陳代謝が活発で熱産生量が多いこと、発汗能力が弱く体温調節機能が未熟であること、体内の水分の割合が多く、水分の出入りが激しいこと、体表面積が大きく環境温度の影響を受けやすいことなどが上げられます。

 小児は高温環境では簡単に熱中症になりやすいことを知っておくことが大切です。

徳島新聞2009年6月10日掲載

ひうら小児科 日浦恭一

 今月は子どもに多い鉄欠乏性貧血から鉄欠乏の重要性につてお話ししてきました。貧血の有無に関わらず体内で鉄は重要な働きをしていますから鉄の不足を予防するためにはバランスのとれた食事が大切です。

 新生児から乳児期早期には母体から移行した鉄が十分ありますから体内で鉄不足になることはありません。生後5か月ころには母体から移行した鉄が使い果たされますから、この時期が生理的にもっとも貧血になりやすい時期です。この時期に離乳食が開始されて、必要な鉄が十分補給されれば貧血になることはありません。しかし離乳食の開始が遅れて乳児期後半に母乳だけしか摂れなければ鉄は欠乏します。

 母乳に含まれる鉄は0.04?/dlですが吸収率は40~50%と高く、調製粉乳の鉄は0.78?/dl、フォローアップミルクは1.1?/dlですが吸収率は約10%と母乳よりも低くなっています。いくら沢山飲んでもミルクや母乳だけでは鉄の必要量を賄うことはできません。

 鉄の1日摂取量の目安は6か月以上の乳幼児では6?前後、8~9歳以上で9?前後、10歳以上の男児と月経のない女児では10?、月経のある女児は13?です。

 鉄が多く含まれる動物性食品には豚、牛、鶏の肝臓、卵黄、魚肉などがあり、植物性食品として大豆、木の実、海藻、ほうれん草、小松菜などがあります。

 動物性食品に含まれる鉄はヘム鉄で、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも吸収が良いとされます。またビタミンCやクエン酸を含む果物や野菜を同時に摂ると鉄の吸収が良くなります。この他に造血に大切なビタミンB6、B12、葉酸、亜鉛の摂取も重要です。

 貧血の予防には鉄を含む食品はもちろん、栄養価の高い良質の動物性たん白質を一緒に摂り糖質・脂質・ミネラル・ビタミンをバランスよく摂取することが大切です。

徳島新聞2009年5月27日掲載

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