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徳島県小児科医会 日浦恭一

 新型インフルエンザが大流行しています。喘息などの慢性の呼吸器疾患を持つ子どもが新型インフルエンザにかかると重症化しやすいと言われます。今月は基礎疾患として大切な喘息について考えてみました。

 喘息の発作は夜間にひどくなることが特徴です。布団に入ると咳が多くなり、「ヒューヒュー」とか「ゼーゼー」という息づかいで、息苦しさを訴えます。昼間は咳も少なく元気にしているのに、夜になると咳き込み、呼吸困難を訴えて眠れなくなることもあります。

 喘息は気管支の平滑筋が発作的に収縮して気道の内側が狭くなる病気で、換気が悪くなり、呼吸困難を訴えます。気管支の収縮とともに分泌物の増加や気道粘膜の腫脹が見られ、呼吸困難が強くなります。

 喘息発作の特徴的な呼吸音は「ヒューヒュー」と表現される呼吸音です。これは気道が狭くなった所を空気が無理に通るときの音で、笛を吹く音に例えらます。呼吸機能の弱い乳幼児では呼気の勢いが弱いために「ゼーゼー」と聞こえます。

 「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」などの異常な呼吸音が聞こえる場合には喘息の他に細気管支炎や気道の異物なども疑います。睡眠障害や呼吸困難を訴える時にはこれらの呼吸器系の疾患を鑑別するために早めの受診が必要です。

徳島新聞2009年12月9日掲載

徳島県小児科医会 日浦恭一

 子どもが誤って口に入れる物の中には吸収されると不都合な症状が出るものがあります。これが誤飲による中毒です。誤飲による中毒の代表がタバコに含まれるニコチンです。

 乳幼児の誤飲原因の中で最も多いのはタバコですが、身の周りにある日用品のすべてが誤飲の原因になります。洗剤、化粧品、薬剤、文具、台所用品、ベビー用品、農薬・殺虫剤、塗料、石油製品など子どもの周囲には子どもが口に入れる可能性のある危険なものがたくさんあります。

 大半の誤飲事故は家族の不注意が原因で発生します。家庭内での誤飲は原因物質によって発生する時間帯がほぼ決まっています。タバコは朝8時と夜8時に多く、洗剤や石鹸の事故は朝9時と夜6時に集中して発生しています。これは大人が使用したものを後始末できていないことが原因です。

 多くの異物を誤飲した時に、水や牛乳を飲ませて、異物を吐かせることが勧められています。しかし中には水や牛乳を飲ませるとかえって吸収が早まるものもあります。また吐かせると、気道に吸引して危険な場合もあります。このような処置が分からない場合には医療機関を受診しょう。

徳島新聞2009年11月18日掲載

徳島県小児科医会 日浦恭一

 子どもは何でも口に入れます。口に入れた異物が食道・胃・腸管に落ち込んだものが消化管異物です。
 
 口に入れたものは結構大きなものでも飲み込むことができます。直径4cmくらいのものはのどを越すと言われます。硬貨の中で最も大きい500円玉でも直径26mmです。したがって硬貨ならどれでも簡単にのどを越して食道へ落ち込むのです。
 
 消化管に落ち込んだ異物は、異物の種類と留まる場所によって処置の必要性や緊急性が異なります。

 異物の種類について、ボタン型乾電池や鋭利な異物はできるだけ早く摘出しなくてはなりません。また大きくて臓器を圧迫するものは早く取り出す必要があります。

 異物が食道に留まる場合には早期に取り除きます。食道の周辺には気管や心臓などがありますから、圧迫によって呼吸器や循環器症状が出る危険性があるからです。

 異物が胃内にある場合には処置を急ぐ必要はありません。多くは排便とともに自然に出るからです。貨幣やボタン型乾電池は一箇所に留まると、通電して消化管穿孔の危険性が高くなりますから早期に摘出します。

徳島新聞2009年11月18日掲載

徳島県小児科医会 日浦恭一

 乳児は何にでも興味を示して手にしたものはまず口に入れてみます。子どもが口に入れるのは食物だけではありません。危険な物でも平気で口に入れます。

 口に入れた異物がのどから気管に入れば気道異物となります。消化管に入れば消化管異物です。入った物が吸収されて不都合な症状が出れば中毒と言います。

 気道異物の原因で多いのはピーナッツなどの豆類ですが、口に入る物なら何でも異物になります。アクセサリーやおもちゃは口に入れやすいので注意が必要です。

 異物が気道を完全に塞いでしまえば窒息しますから直接生命に関わります。気道と異物の間に隙間があれば窒息は免れますが、気道は狭くなり換気障害から肺の過膨張や呼吸不全となります。

 また異物が気道壁に長く留まると気道壁に炎症が起こり、気道内の分泌物が増加し、肺炎や無気肺を起こすことがあります。

 気道異物は自然に排出されることはありませんから、異物が疑われる場合には、早く診断をつけて処置することが大切です。

徳島新聞2009年11月11日掲載

徳島県小児科医会 日浦恭一

 子どもの頭部外傷の大部分は擦過傷や打撲傷で、骨折や頭蓋内損傷などの重症の割合はわずかです。しかし頭部は血管が豊富ですから、表面の傷でも思わぬ大量の出血になることがありますから注意が必要です。

 さらに頭部の皮膚は薄く、外傷を受けた時に頭蓋骨から軟部組織がはがれやすく血腫を作りやすいのです。つまり「たんこぶ」ができやすいのです。

 また子どもの頭蓋骨内側と脳表面をつなぐ静脈は直線的に走行しているために、頭部に強い力が加わるとこの血管が切れやすく外傷性くも膜下出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫などの頭蓋内出血を起こしやすくなります。

 これらの頭蓋内に出来た血腫が脳実質を圧迫し、さらに脳幹部を圧迫すると脳ヘルニアとなり生命に危険性を及ぼします。また脳実質の損傷が起こると周辺の脳組織に脳浮腫をともない、頭蓋内圧の上昇が起こりますから同様の危険性が高くなります。

 頭蓋内圧の上昇時には厳重な全身管理が必要となります。急変することもありますから、緊急の脳外科的な処置が必要となる場合もあります。

 子どもの頭部外傷には多くの問題が発生します。事故予防について十分な安全対策を考えておきたいものです。

徳島新聞2009年10月28日掲載

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