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徳島県小児科医会 日浦恭一

 頭部外傷の際にもっとも大切なことは受傷直後の意識状態です。受傷直後に重い意識障害があれば、生命の危険性や神経系に後遺症が残る可能性が高くなります。

 乳幼児の意識状態を客観的に評価するのは難しいものです。重症の意識障害の判定を誤ることはありませんが、軽い意識障害では判断に迷う時があります。また意識障害は時とともに変化することがありますから、注意深く経過観察することが大切です。

 意識障害の評価には、次の3段階に分けるのが一般的です。(1)刺激をしても覚醒しないもの、(2)刺激をすると覚醒するが刺激を止めると眠り込むもの、(3)刺激をしないでも覚醒しているが普通ではないものの3つです。

 さらにそれぞれの段階を刺激の程度や反応の度合いによって細分して意識障害の程度を点数で評価します。

 また開眼、言語反応、運動反応を組み合わせて評価する方法もあります。乳幼児では眼球運動や瞳孔反応の有無、自発呼吸の有無、姿勢や緊張状態などを組み合わせて意識障害の程度を判定します。

 受傷直後の意識状態はとても重要ですが、意識状態は変化しますから経過を追って評価することが大切です。

徳島新聞2009年10月21日掲載

徳島県小児科医会 日浦恭一

 子どもの死亡原因では、不慮の事故によるものが、ほとんどの年齢層で第1位を占めています。とくに頭部外傷は生命の危険性が大きく、神経系の後遺症を残す可能性も高くなります。今月は子どもの事故の中でも危険性の高い頭部外傷について考えてみました。

 乳幼児はからだの大きさに比べて頭が大きく重心が高いので、不安定で転びやすいのが特徴です。また子どもは色々なものに興味を示してからだを乗り出して覗き込むために、頭から転落しやすいものです。さらに運動発達の未熟性や危険を回避する能力に乏しく、衝突も起こりやすいものです。

 したがって乳幼児には転落、転倒、墜落、衝突など頭部外傷の原因になる重大事故が発生する可能性が高いのです。

 頭部外傷を訴えて医療機関を受診する子どもの大部分は軽症者ですが、中には骨折や頭蓋内損傷などの重症者が含まれていることがあり注意が必要です。

 頭部外傷の後に意識障害やけいれん、まひなどの神経症状が認められる場合には、X線やCT検査ができる病院や、脳外科的な処置ができる病院に搬送して、症状の急変がないかどうかを厳重に経過観察する必要があります。

徳島新聞2009年10月14日掲載

感染症の予防(3)


徳島県小児科医会 日浦恭一


 新型インフルエンザをはじめとする感染症には予防が大切です。麻疹や水痘のように空気感染する疾患は同じ部屋の中に居ただけでもうつることがありますから、その予防には厳重な隔離が必要となります。

 これに対して飛沫感染は病原菌を含む飛沫が比較的大きく、水分を含んで重く、比較的落下しやすいので長時間空気中に漂うことはありませんが、皮膚や衣服に付着した病原菌を含む飛沫が接触して伝染することがあります。したがって鼻水や痰を多く排出して、せきやくしゃみで周囲に飛沫をまき散らす場合には、飛沫感染の予防とともに接触感染にたいする予防処置も必要になります。

 飛沫感染を周囲にまき散らさないために提唱されたのが「せきエチケット」という考え方です。せきやくしゃみが出る時にはマスクやティッシュペーパーで口元をおさえるか、何もなければ袖口で口元を隠すようにして、分泌物の飛散を遮るようにします。

 飛沫を遮って、分泌物のついたマスクやティッシュなどはビニール袋や蓋付きバケツに捨て、他の人に接触しないように努めます。マスクに触れた手は流れる水で十分に洗って微生物が他に付着しないように注意します。

徳島新聞2009年9月23日掲載

感染症の予防(2)


徳島県小児科医会 日浦恭一


 感染症の予防には病原菌やウィルスの感染経路による予防法を考える必要があります。一般に感染経路には空気感染、飛沫感染、接触感染の3つがあります。

 空気感染と飛沫感染の違いは病原菌を含む粒子の大きさの違いによります。その粒子は大きさによって飛沫と飛沫核に分けられます。飛沫は水分を多く含み、粒子径が大きく重いために遠くまで飛べないもので、これによる感染が飛沫感染です。人から人へ、せきやくしゃみでうつります。

 粒子径が小さく軽いものを飛沫核と呼びます。飛沫核は長時間、空気中に浮遊し、遠くまで飛びますから空気感染を起こします。
 
 空気感染する感染症には結核や麻疹、水痘などがあります。空気感染するものでも条件によっては飛沫感染や接触感染を起こすものがあります。SARSやインフルエンザ、ノロウィルスなどは空気感染も飛沫感染もする可能性があります。

 感染の予防には患者さんや保菌者の隔離が大切です。病原菌が感染力を有す期間は感染症の種類によって異なりますから、実際に患者さん隔離する期間はそれぞれの感染症によって異なり、十分な注意が必要です。

徳島新聞2009年9月16日掲載

感染症の予防(1)


徳島県小児科医会 日浦恭一


 私たちを取り巻く人の集団を含む環境には細菌やウィルスなどの様々な微生物が存在します。その中に病原性を持つものがあって、感染すると発病し、再び感染源になります。健康な人の中にも病原菌を持っていて感染源になる保菌者が隠れています。

 病院や診療所には発熱やせきなどのかぜ症状を持って感染源になる可能性のある人たちが集まってきます。病院はこれらの病原菌の非常に多い環境です。さらに子どもが大勢集まる学校や保育園なども感染症をうつしあう危険性が高い環境です。

 今月は感染症の一般的な予防法について基本的な考え方についてお話します。

 私たち医療従事者が感染症を予防するときに考えることは、常に自分が患者さんに病原菌をうつさないということです。感染症の患者さんでも健康な人でも、多くの細菌やウィルスを持っている可能性があります。

 患者さんの皮膚や衣服についている病原菌は接触によって手指に付着しますから、これを他の人に感染させないためには、病原菌のついた手指をまず石鹸と流れる水でしっかり洗い流します。さらにアルコール消毒をすれば多くの病原菌を減らすことができます。

徳島新聞2009年9月9日掲載

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