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県民の皆さまへ

 ウイルスが原因の胃腸炎は冬に流行する傾向があります。代表的な症状は嘔吐(おうと)と下痢ですから嘔吐下痢症と呼ばれます。この病気はウイルスの種類や環境条件によって集団発生することがあるので注意が必要です。

 嘔吐下痢症の原因の中でもっとも多いのはロタウイルスです。ロタウイルスによるものはウイルス性胃腸炎の中でもっとも頻度が高く、また症状が重いので乳幼児にとっては大切な病気のひとつです。

 ロタウイルスによる嘔吐下痢症は人から人へうつります。糞便(ふんべん)を介して口から感染するのです。この病気にかかると約1週間は糞便中にウイルスが排出されます。体外に出たウイルスは長い間、感染力を持続することが知られています。つまり一度この病気が発生すると、家族内や保育園などでは次々患者さんが増え続けることになるのです。

 ロタウイルスの潜伏期間は24時間から72時間とされます。主な症状は下痢、嘔吐、発熱で、発病初期には嘔吐と発熱が見られます。嘔吐は2~3日続きます。下痢はその後に見られることが多く、平均5日間続きます。

 ロタウイルスの下痢は水様便で色は白色から黄白色です。一般にロタウイルスによる下痢は他のウイルスによる下痢よりも重症で脱水症を起こすことがあります。

 ロタウイルスの診断にはウイルスを検出する迅速診断キットが用いられることがあります。病初期に病気の重症度を予測する上でうまく利用すれば有用な検査法です。

 ロタウイルスに対する有効な治療薬はありません。初期の嘔吐や発熱、その後の下痢に対して水分補給と電解質補充がもっとも大切です。

 抗生物質は無効であるばかりでなく腸内の正常細菌叢(そう)を乱すので、この病気を疑った場合には使用しません。

 嘔吐下痢症は人から人にうつります。とくに症状がなくなった人からもウイルスが排出されていることがありますから、糞便の処理や手洗いなどに注意して予防することが大切です。

2007年1月9日掲載

 大人でも子どもでも肥満があるだけで症状があらわれることはありません。しかし高度の肥満や長い間放置した肥満はさまざまな病気の原因になります。徳島県で糖尿病の死亡率が全国一高いことが大きな問題になっています。このことは徳島県の子どもたちには、大人になったときに糖尿病の原因になる可能性のある肥満が多いものと考えられます。

 もともと私たちの先祖は常に飢餓と戦って生きてきました。したがって昔は摂取した栄養の過剰部分をからだに蓄える素質を獲得した人が生存に適していたのです。しかしこのような遺伝的な素質は現代のように食物が有り余る社会ではさまざまな疾患を引き起こす原因になることがあります。

 現代では食物はいつでも欲しいものが欲しいだけ手に入ります。都市型社会では運動する時間も場所もありません。洋風の食事には脂肪と糖質が多く栄養的に偏っています。肥満に対する考え方も個人によって大きく異なります。家族が肥満である家庭の子どもは肥満を病気と考えることはありません。

 肥満に対する治療の中心は食事療法と運動療法です。

 そのためには現在の生活習慣を見直すことが必要です。毎日の食事内容を調べることで、必要な栄養が十分とれているのか、過剰な栄養はなにか、などを知ることが大切です。

 栄養必要量は年齢、性別、体格によって異なります。また食物は総カロリーだけでなくタンパク質、ミネラル、ビタミン類などの栄養バランスが大切です。食べ過ぎだけでなく偏食にも注意する必要があります。生活中の活動量にともなう消費量は個人で異なります。

 子どもの栄養は成長に必要なタンパク質やカルシウム、鉄など大人よりも多く必要とします。好きなものだけ過剰に摂取すると必要なものが不足して総カロリーだけ過剰になることがあります。

 肥満に対する正しい治療は食べないことではありません。正しい食事のあり方を学ぶことで、無理なく続けられる正しい食事の習慣を子どものころから身につけることが大切です。

2006年12月26日掲載

 子どもの肥満が増えていることは明らかですが、肥満を示す指標が全国的に統一されているわけではありません。肥満の指標には体格指数(BMI=Body Mass Index)と肥満度を使用する方法があります。

 最近、成人ではBMIを使用することが一般的になっています。これは体重(kg)を身長(m)の二乗で割ったものです。成人では22を標準として25以上を肥満とします。

 小児でも昔から乳幼児の栄養状態の指標としてBMIと同じ計算式で算出したカウプ指数を使用してきました。しかし小児では成長とともに身長も体重も変化しますから、この値は年齢とともに標準値が変動します。年齢別の標準値を知らなければ肥満を判定する指標として用いることはできません。また年齢とともに変わるBMI値で肥満度の変化を評価することもできません。

 小児のBMI値は年齢別に大きく変動しますが、それは小児では基準になる身長が変化するからです。成長が止まって身長が一定になった後の成人ではBMIの増加を体重の増加、すなわち体脂肪の増加、肥満度としてとしてとらえることができるのです。

 小児のBMI値は出生直後から乳児期後半まで急速に増加して、その後減少して6歳前後でもっとも小さくなります。その後は成長にともなってゆっくり増加を続けます。身長増加が停止する時期にはBMIはほぼ一定の数値になります。

 学童や生徒の肥満を判定する方法としては標準体重と比較する方法が一般に使用されています。

 性別、年齢別の標準体重を実測体重と比較することから肥満度を求めるのです。肥満度は実測体重と標準体重の差を標準体重で割ったものを%で表したものです。肥満度が20%以上を軽度肥満とし、30%以上を中等度肥満、50%以上を高度肥満と判定します。標準体重を出すのに性別、年齢別の標準身長・標準体重表を利用するので少し煩雑ですが、肥満度を数字で表してあるので全年齢で比較しやすく、また経時的な変化を示すのにもわかりやすい方法です。

2006年12月19日掲載

 最近では生活パターンの変化から運動不足や食事形態の洋風化などが進み、大人も子どもも肥満になる人が増えています。今月は肥満のなにが問題になるのか、肥満の基準、肥満の背景などについて考えてみました。

 最近の日本人の子どもたちの身長と体重の変化を見ると、身長はほぼ伸び止まりであるのに対して体重は増え続けています。つまり肥満している子どもたちが増えているのです。

 肥満の原因には過食や運動不足が考えられますが、とくに必要以上の栄養を取ることで、からだに余分な脂肪が蓄積することが肥満です。

 子どもの栄養は運動などで消費される分と、成長に使われてからだに蓄えられる分が必要です。これらを除く余分なカロリーが脂肪として蓄えられるわけです。運動によって骨や筋肉が増加するものは肥満ではありません。蓄えられた脂肪が増加することによって将来からだの異常を引き起こすことが問題になるのです。

 肥満はそれだけでは症状を示すことはありませんが、これに高血圧、糖尿病、高脂血症などを合併すると動脈硬化による病気の発病率が高くなると言われます。これがメタボリックシンドロームと呼ばれる状態で、最近とくに生活習慣病として重要視されるようになりました。

 成人でこのような生活習慣病が問題になる背景には、その予備軍として子どもの肥満が増えていることが挙げられます。

 子どもの肥満の中でも乳児の肥満は大人の肥満につながることはないと言われています。しかし3歳児の肥満になりますと、多くは小学生の肥満と密接な関係を持つようになり、これが成人の肥満につながることが多いと言われます。

 また両親または片親が肥満の家庭に育った子どもは、3歳時には肥満でなかった子どもも、小学生の時には肥満になる危険性が高くなるとされます。このように肥満の原因には遺伝的な素質とともに、食生活をはじめとする生活環境の影響が大きいものと考えられるのです。

2006年12月12日掲載

 今月は迅速検査を中心にお話ししてきました。検査の発達とともに治療も進歩してきました。検査は簡単で短時間に結果が得られてとても便利なものです。

 インフルエンザ迅速検査とウイルス分離の結果が一致する割合は80~90%であり、迅速検査のウイルス検出率はかなり正確なものだと言えます。この検出率は成人よりも小児のほうが高く、またA型のほうがB型よりも高いとされます。

 迅速検査の結果は試料に含まれるウイルス量に影響されます。発病初期にはウイルス量はまだ増加中であり、発熱数時間以内の検査の感度は10%くらい低いとされます。またウイルスの排出期間は乳幼児のほうが持続してウイルスが排出されますから小児のほうが長く陽性が続きます。抗ウイルス剤の投与後もしばらくは検査陽性が続きます。

 検査法はウイルスと特異抗体を反応させて発色させます。その色調を目で確認する方法で判定しますから、色調が弱い場合には判定する人によって陽性・陰性の判断が分かれることがあります。検査試料の取り方によっても検査結果に影響が出ることがあります。

 インフルエンザ流行の最盛期には検査で陰性の人の中にもインフルエンザの人が紛れ込むことが多くなります。職場や学校で流行しているときや、家庭内に患者さんが居るような場合には、その症状からインフルエンザの診断をつけることもあります。検査が陰性であってもその症状から臨床診断をすることで早めに治療開始することも大切なことです。

 インフルエンザの検査や治療は進歩していますが最も大切なのは予防です。できるだけ多くの人が予防接種を受けて職場や学校、家庭内にインフルエンザを持ち込まないようにすることが大切です。

 もしインフルエンザにかかった場合には隔離して安静を守ります。治療して熱が下がってもしばらくはウイルスが排出されますから症状が完全に消失するまでは通学や通園は中止します。新型インフルエンザの場合でももっとも大切なことは周囲の人にうつさないことです。

2006年11月28日掲載

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